京都市立大藪小学校のすぐ横にある国道、京都〜神戸線には日に２万７千台の車が行き交い、通学に横断する子供たちは命がけである。事故防止に１番の陸橋建設は予算が無いため、６年生を中心とする子供たちは、僕たちでお金を集め、ＰＲもしようと昨年９月から週２回の１円貯金を始め、１１万円も集めた。子供たちに続けと地元でも２７０万円を集め、土地も無償で地主さんが提供した。この話に注文を受けた舞鶴の工場でも採算を無視して協力、何とか卒業までに陸橋を渡りたいという子供たちの願いに答えて突貫工事を進めた。１９６４年３月１９日、高さ５メートル、長さ２１メートルの陸橋はついに完成、渡り初めを迎えた。大人たちがとても無理だと諦めていた陸橋を見事実現させた子供たち。卒業して行く６年生にとってはよい思い出になるであろう。（町から村から）

中国遠征の旅に出た日紡貝塚チームは北京体育館で北京体育学校チームと対戦、６千人の観衆を前に妙技をふるいストレートで勝った。試合後、周思来首相は大松博文監督らにぜひコーチにきて欲しいと握手を求めた。８戦全勝、さらに沖縄では男子チームを軽く破り、通算１７４連勝を飾って帰国した日紡貝塚チーム。半田百合子選手の郷里・栃木県宇都宮ではさかんな歓迎を受けた。送迎会の郷土のヒロインを紹介する大松監督のユーモラスなあいさつは喝采を博した。こうして東洋の魔女たちはくつろいだ休日を過ごした。

東京オリンピック開幕間近。世界最大の旅客機ＴＵ１１４で羽田入りしたソビエトチーム。日本の強敵女子バレーチームの顔も見られる。１００ｍ背泳で期待のイギリスのノフォークさん。統一ドイツチームの第一陣の中で目立つローマ高飛びの優勝者クラマーさん。そして相継ぐ来日選手団に混じってミスターオリンピック・ブランデージＩＯＣ会長も来日した。折から世界中のお客様を迎える町では、五輪の町を美しくと官民あげて美化運動。お役所も清掃パトカーをくりだして不心得者に目を光らせている。９月２６日、五輪選手村では参加者２名のコンゴをはじめ、オーストラリア、韓国、ルーマニアが参加して入村式、国籍を越えた交歓風景がみられる。村内では各国選手が早くも最後の調整に入った。

オリンピック後半戦、都体育館の体操。チェコのチャスラフスカ選手は個人総合で宿敵ソ連のラチニナ選手をおさえて初優勝。男子チームは日本がローマについで２連勝。個人総合では遠藤選手が日本念願の初優勝を飾った。女子チームもよく健闘し３位。陸上最終マラソンコースの甲州街道は１２０万人の人出、午後１時、６８人の選手が一斉に国立競技場をスタート。１８キロ当たりからエチオピアのアベベがトップで独走体制日本期待の円谷幸吉は２位、これを追ってイギリスのヒートリー、キルビィが追う。結局アベベが２時間１２分１１秒２の驚異的な世界最高記録で１位、五輪初の２連勝。２位ヒートリー、円谷は３位となった。日ソバレーボールの決勝は日本チームがストレートでソ連を降し、この日の為に青春を賭けた彼女たちに金メダルが輝いた。１０月２４日は閉会式。

後継総裁めざす本命の佐藤栄作、対抗馬の河野一郎、そして藤山愛一郎と、頭の痛い川島正次郎、三木武夫の両調整役。臨時国会を控え３候補を一堂に集めたが三人三様の思惑がからんで一向に決まらず、とうとう池田勇人氏を癌センターに訪ねご意見を伺い（１９６４年１１月９日）、結局池田氏の推薦で佐藤氏が新総裁に選ばれた。首班指名の投票で念願の総理のイスをしとめた佐藤氏は直ちに組閣に着手、河野氏も協力を約束してスピード人事が完了した。

１９６４年６月３日、韓国の首都ソウルでは１万人を越える学生が市内をデモ、高姿勢の警官隊はデモ隊に激しく襲いかかり、市街戦さながらの乱闘となった。日韓交渉反対に端を発した学生運動はインフレによる生活困窮がからんで広がり、市民も加わって朴正煕政権の打倒を叫ぶまでに高まった。勢いづいたデモ隊に政府はついに軍隊を出動、ソウル市内に非常戒厳令を敷いた。この事態に金鐘泌共和党議長が辞任するなど、朴政権は誕生以来最大の危機に立たされている。

１９６４年１１月１０日から黄色い血追放を目指す愛の血液助け合い運動が始まった。東京でも移動採血車がフル運転。かつて売血に頼っていた血液も半減して健康な血液が増えている。黄色い血追放は全国的な運動に盛り上がってきた。（「黄色い血」：売血を頻繁に行う人から採取された血液は、赤血球が少なく黄色に見えるためそう呼ばれた。肝炎など輸血による病気感染も起こり、社会問題化していた。）（週間話題）

ようやく春めいてきた日ざしのもとトレーニングにはげむ山中毅、福井誠らの水泳陣。砂袋で腹や背の筋肉を鍛え、ゴムチューブを使って腕の力を蓄えたり、訓練用の自転車を使ってのスタミナづくり。女子の木原光知子選手も懸命に汗を流すなど、オリンピックめざしてハードトレーニングが続いている。