香川県大川郡の長尾町はいま夏の収穫の真っ最中、農協の集荷所は猫の手も借りたい忙しさ。この町の農協は全国でも珍しい多角経営を営み、現在２３種類の事業を行っている。長男は畑で働き２、３男は農協で働くという農村の新しい行き方が見られる。郡内３０の小、中学校の給食を一手に引き受けるパン工場。農機具から自動車にいたる修理工場も経営している。また１５００万円でデラックスなガソリンスタンドも完成した。中でも一番のドル箱はモダンなスーパーマーケット。またスーパーマーケットに来られない人のために移動マーケットも開業、将来は近在の農家を一手に握ろうとサービスにけんめい。出来ることは何でもやろうというマンモス農協、商売人顔負けの商法で多角経営の道をばく進中である。（町から村から）

今月下旬に日本寄港が予定されているアメリカの原子力潜水艦、シードラゴン号がこの程沖縄で公開された。艦上ではガイガーカウンターを使って原子炉の安全性のＰＲ。初の寄港地と見られる佐世保では、革新派が監視所を作って原子力潜水艦の入港を阻止しようと頑張っている。１９６４年１１月８日市内では社会党系と共産党系がそれぞれ集会を開いて寄港反対の気勢を上げた。一方横須賀市でも１１月７日社会党系の労組員２万人が集まって原潜阻止の東日本大会を開いた。

１９６４年２月１日東京大手町のビル工事現場で突然地くずれが起こり、およそ９００平方メートルが大音響と共に陥没。働いていた作業員のうち１人が死亡、２人が負傷した。このため付近の交通は完全にストップ。事故はシートパイルを打ち込み鉄骨を組み立てる基礎工事中の現場で、前日の大雨のため地盤がゆるんで起きたもの。皮肉なことにこの日からオリンピック関係工事災害防止運動が始まった矢先の出来事であった。（週間話題）

死者行方不明１０９名。山陰、北陸を襲った集中豪雨（１９６４年７月１８日）で大被害を受けた島根県出雲地方の復旧は一向にはかどらない。中でも町中泥の海と化した大原郡加茂町は水の退いたあとに深刻な水不足と重なる苦しみ。一方、県下の交通はマヒ状態が続き、山陰本線は１２ヶ所で土砂崩れ、木次線は７ヶ所で寸断された。国鉄は不通区間にバスを仕立てて連絡に大わらわだが、山陰線の全線開通はまだ見通しがたたない。

１９６４年２月２８日、皇居仮宮殿東の間で池田勇人首相を議長に皇室会議が開かれ、全員一致で義宮さまと津軽華子さんのご婚約が決まった。この日ピンクのドレスとカクテルハットという清楚な装いの華子さんは地元の人の祝福に送られて、下落合の自宅を両親とともに出発、皇居で天皇・皇后両陛下と晴れの対面をした。記者会見で明るく暖かい家庭を築き上げたいと語る華子さん。天皇家の次男坊、気取らぬお人柄の義宮さまは、北海道旅行でマリモにまつわるアイヌ伝説から悲恋の詩を読まれるロマンチスト。２月２９日初めて華子さんは渋谷の義宮御殿を訪問、お二人だけの楽しい一時を過ごされた。

北上平野のほぼ中央にある岩手県金ヶ崎町。人口１万６千のこの町のご自慢は日本一という有線放送。２百回線の交換施設を持ち２千世帯もの加盟者を誇っている。２ヶ月に１度番組編成委員会が設けられ、加入者代表を含めて番組が決められる。プログラムが決まると１台しかない録音機をかついで早速取材活動。同じ町の人たちだけに農業番組の録音もいたってスムース。番組の中でも高い視聴率を示すのが町議会の中継放送。審議の模様がそのまま放送されるとあって議員たちもうかうかしてはいられなくなって来た。金ヶ崎の有線放送局は町ぐるみの期待を集めてただ今放送中である。（町から村から）

都会の空気は工場から吐き出す煙のほか、増加する車の排気ガスが加わって汚れがひどく、交通整理のお巡りさんも排気ガスにむせぶ始末。最近ばい煙監視員の目が厳しくなり排塵装置を取り付ける工場も多くなったが、それも大企業の場合に限られ、その上化学工業の発達から吐き出される煙は様々である。中でも亜硫酸ガスを含む煙が多く子供の発育にもかなりの影響を与えていると言われている。大都会につきものといわれる公害問題、その根本的解決はまだあまりにも遠い道程。

１９６４年５月２７日、ネール首相死去の知らせに東京のインド大使館には在日インド人が詰めかけ父とあおいだ指導者の冥福を祈った。池田勇人首相も大使館を弔問、政府代表として大平正芳外務大臣は葬儀に参列するため急きょインドへ向かった。インド独立に生涯を捧げたガンジー翁の後継者として若くして独立運動に身を投じたネール首相。１９４７年の独立以来、１７年の長きにわたり首相をつとめ、国民の信頼を集めた。一方、中立外交をとなえて国際舞台にも活躍、米・ソの橋渡し役として国際緊張の緩和に努めた功績は高く評価されている。１９５７年（昭和３２）には日本を訪問、熱狂的な歓迎を受け、子供たちの希望にこたえて贈った象のインディラと８年ぶりに対面した。アジア・アフリカの新興勢力を背景にしたネール外交は、中国・パキスタンとの紛争が未解決のまま。ネルー首相は在任途中で７２歳の波乱に富んだ生涯を終えた。