可愛らしい小学生のリーダーを先頭に、あこがれの甲子園の土を踏んで２３チームが入場、春を告げる第３６回選抜高等学校野球大会の開幕。倉敷工高の菱川章主将の力強い宣誓の後、１０日間に亘る熱戦の火蓋を切った（１９６４年３月２８日）。（週間話題）

１９６４年６月１１日、神奈川県川崎市の昭和電工石油化学工場のプロピレンオキサイドタンクが突然大音響とともに爆発した。直径６メートル、高さ１２メートルもある４基の巨大タンクのうち、２基は土台から吹き飛ばされ、２基は横倒しになるという凄まじさであった。爆発現場から十数メートル側でプラント増設中の作業員が爆風で吹き飛ばされ、死者１６人、重軽傷者約１００人を数える大惨事となった。原因はまだ不明だが、タンクから漏れたガスに溶接中の火花が引火したのではないかとみられている。死者のほとんどは下請け業者であり、大工場の中で安全管理の谷間に置かれがちな下請け業者の悲劇をこの事故は物語っている。６月１４日、鶴見総持寺でしめやかに合同慰霊祭が行われた。時代の花形産業として脚光を浴びる石油コンビナート、それは危険をはらんだ都会の火山地帯でもある。

東京オリンピックまであとわずか。佐藤栄作・オリンピック大臣は建設中の競技場の視察に出かける。朝霞の陸上自衛隊では強化合宿中のフェンシングとボクシングチームを訪ねて選手を激励、日の丸が上がる自信を持ったと満足そう。忙しい合間に静かな茶室で一時を過ごす佐藤五輪相。１２年前に始めた茶道は免許皆伝の腕前。政局の動きも忘れ、さびの境地を夫人とともに楽しんでいる。

岡山県津山市の美作無線クラブは、会員３０名を数えなかなかの盛況である。この仲間たちが全国で初めてのアマ・テレビ局の開設に乗り出した。スタジオは科学博物館。割り当てられた電波は４３５ＭＨｚ。映像出力２５Ｗ、音声出力１０Ｗという、アマチュア無線としては大きなもの。リーダーの木村先生は開局を前に市内をロケーション、フィルム番組の作成に乗り出した。生中継のテストも上々、テレシネも備えて、民放局顔負けの設備。一切の準備は完了、念願の予備免許も下りて美作のアマ・テレビ局はコールサインもＪＡ４ＹＡＭと決まり、本番スタート、全国のハム仲間の期待をのせて好調に滑り出した。（町から村から）

１９６４年１１月１０日から黄色い血追放を目指す愛の血液助け合い運動が始まった。東京でも移動採血車がフル運転。かつて売血に頼っていた血液も半減して健康な血液が増えている。黄色い血追放は全国的な運動に盛り上がってきた。（「黄色い血」：売血を頻繁に行う人から採取された血液は、赤血球が少なく黄色に見えるためそう呼ばれた。肝炎など輸血による病気感染も起こり、社会問題化していた。）（週間話題）

臨時列車まで繰り出した水戸偕楽園の梅まつりは、生憎の雨で人出がさっぱり。予想が狂ったのは梅見客を当て込んだ売店で、不景気に寒さばかりが身にしみる。それでも訪れた人々は雨にも負けず梅見の宴としゃれこんだ。酔うほどに歌や踊りも飛び出し、うらみの雨も酔眼もうろうとした梅見客にとっては苦にならないようだ。

愛媛県吉田町河内にある大楽寺の住職さんは、３度の飯より機械いじりが好きという発明好きの和尚さん。お勤めの合間を見ては新しいアイディアを練り、廃品を使って次々と発明を続けている。ギターとマンドリンを組み合わせた新楽器、蓋を取ればレコードプレーヤーになるテーブル、太陽熱の利用、ペダル式水道栓、ボタン一つで開く障子、ネオンの点く扇風機など、家の周囲はアイディア作でいっぱい。また和尚さんは大の８ミリマニア。生前の姿をフィルムに収めて動画の過去帳を作ろうと、檀家回りのたびにカメラをまわしている。初めは縁起でもないと嫌がっていたお年寄りたちも、子孫への良い思い出になると希望者が続出、すでに１５０軒もの８ミリ過去帳ライブラリーが揃った。お経に替わってフィルムで紐解かれる過去帳は、生前を偲ぶ家族に好評を得ている。趣味と実益を兼ねた発明和尚さんは町の人気を集めている。（町から村から）

東京オリンピック資金財団の記念メダル発売前夜、銀座通りは徹夜の行列、フトンや寝袋を用意した完全装備型まで加わってすごい前景気。一夜あけると行列はどんどん増え、デパートを取り巻いて延々長蛇の列がつづく。ようやく予約券を手にした人はまるでオリンピックに入賞したような喜びよう。割り込み騒ぎの挙げ句ついに売り切れ、メダル獲得はやっぱり楽ではない（１９６４年４月１７日）。（週間話題）