戦後、自動車の少なかった頃の銀座４丁目でお巡りさんの交通整理コンクールが行われたのは昔の物語となってしまった。有楽町・新橋間の高速道路の下は、かつて銀座を根城とする廃品回収業者の多い地区だった。ターミナルとして発展した渋谷駅前の広場では戦後の世相の縮図がみられ、時の流れを知っているのは忠犬ハチ公であろう。バラックのマーケットも消えて、第２の副都心として生まれ変わったのは新宿。マンモスデパートが偉容を誇るのは池袋。ここでもバラックのマーケットが栄えたが、その跡にはデパート、銀行、商店街が並び見ちがえるほど変わった。東京の勝手口、上野駅はかつぎ屋で賑わい、地下道はホームレスのねぐらと化した。しかし、東京駅からは変わらぬ列車を待つ人の列、かつて引き揚げ者が帰ってきたこの町をぬって今、超特急が帰省客をいっぱいのせて故郷に急ぐ、２０年の時の流れ、１千万都市にふくれあがった東京の横顔。（にっぽん昨日今日）

身体障害者のオリンピック、パラリンピック東京大会を目指して最後の仕上げをする日本のバスケットチーム。関東労災病院で療養中の船田中さんは旗手として晴れの開会式に臨むことになった。このころ外国からも車イスに乗った選手が続々と羽田へ到着。１９６４年１１月８日、織田フィールドで船田さんたちの捧げる大会旗を先頭に２２ヵ国５７５人が参加して開会式が行われた。選手宣誓に続いて名誉総裁の皇太子ご夫妻が各国選手を激励。その後車イス・スラロームなど独特の競技が行われ、身体の不自由な人たちのスポーツの祭典は５日間に亘って繰り広げられた。

東京オリンピック開幕間近。世界最大の旅客機ＴＵ１１４で羽田入りしたソビエトチーム。日本の強敵女子バレーチームの顔も見られる。１００ｍ背泳で期待のイギリスのノフォークさん。統一ドイツチームの第一陣の中で目立つローマ高飛びの優勝者クラマーさん。そして相継ぐ来日選手団に混じってミスターオリンピック・ブランデージＩＯＣ会長も来日した。折から世界中のお客様を迎える町では、五輪の町を美しくと官民あげて美化運動。お役所も清掃パトカーをくりだして不心得者に目を光らせている。９月２６日、五輪選手村では参加者２名のコンゴをはじめ、オーストラリア、韓国、ルーマニアが参加して入村式、国籍を越えた交歓風景がみられる。村内では各国選手が早くも最後の調整に入った。

大映のミュージカル映画「アスファルト・ガール」に出演するアメリカ・モダンジャズ界の第１人者、ローランド・ハナの一行が多摩川撮影所にやってきた。島耕二監督らに挨拶、早速リハーサルに入った。（週間話題）

東京オリンピックを機会に２９ヵ国、約１千人の若者が集まって第２回世界青少年キャンプが開かれた。東京学芸大学の宿舎では、２段ベッドを並べて国際色豊かな共同生活。午前６時の起床に始まる青年たちの１日。昼はオリンピックの応援や団体旅行に出かけ、夜は演芸会やダンスパーティーで賑やかな交歓。若さにもとづいた「友情の祭典」ともいえるこのキャンプは、国際親善と相互理解を深めることであろう。

選抜か単独か、注目のエイト代表を決めるレガッタ決勝は１９６４年５月２３日、改装なった戸田の静水コースで行われた。この日はあいにく３メートルを越す強い逆風。選抜クルーはピッチを落し力強く水をつかむブレードワークで他のクルーを大きく引き離し、安定した漕法でそのままゴールイン。昨年１１月、一旦五輪代表に選ばれながら一部の反対で候補に格下げされた選抜クルーは、半年のトレーニングが見事実って、オリンピック入賞の大きな望みがかけられている。

東京オリンピック資金財団の記念メダル発売前夜、銀座通りは徹夜の行列、フトンや寝袋を用意した完全装備型まで加わってすごい前景気。一夜あけると行列はどんどん増え、デパートを取り巻いて延々長蛇の列がつづく。ようやく予約券を手にした人はまるでオリンピックに入賞したような喜びよう。割り込み騒ぎの挙げ句ついに売り切れ、メダル獲得はやっぱり楽ではない（１９６４年４月１７日）。（週間話題）

１９６４年５月、ソビエト連邦のフルシチョフ首相はナイル河に建設中のアスワン・ハイ・ダムの第１期工事完成式に出席のため、アラブ連合を訪問した。この日アレクサンドリアから首都カイロにいたる沿道は歓迎の人波で埋まり、遠来の客を迎えた。一方、日本の旅を続けるミコヤン第一副首相は広島を訪れ、原爆犠牲者の霊に敬虔な祈りを捧げた。そのあと厳島に立ち寄った一行は日本の風光を楽しみ、北九州の工業地帯では製鉄所を見学して日本の工業水準の高さを再認識した様子。東京に帰って歌舞伎座で中村歌右衛門さんと再会、何でも見てやろうと歩き回ったミコヤン氏である。