月旅行の足がかりとして注目されたアジェナ無人衛星と、ジェミニ８号のドッキングが行われた（１９６６年３月１７日）。美しく輝く地球をバックに浮かび出たアジェナに、ジェミニ８号が鼻と鼻が向き合うように接近。カプセルとカプセルが見事に重なった一瞬、史上初のドッキングが成功した。しかし、電気回路の故障のため、ジェミニ８号が激しく回転を始め３０分間でドッキングは中止、アームストロング、スコット両飛行士は沖縄東方の太平洋上に不時着水した。

実りの秋が近づくと香川県香川町では、ひょうげ祭りというおどけた祭りが行われる。シュロで作ったチョンマゲなど全て農作物に関係のあるものを使い、仮装行列を繰り広げる。先頭を行くのはヘチマの鼻のてんぐ様、その後を奴さん以下、８０名の大名行列が手振り身ぶりも面白く道中を練り歩く。この祭りは干ばつに苦しむ農民を救うため、ため池を作ってくれた矢延平六という郡奉行の功績をたたえるもので、農民たちの感謝と喜びがこめられている。香川町に２５０年来続く珍しい祭りである。

１９６６年８月２６日、ピカソとともに今世紀最大の画家と言われるホワン・ミロの名作展が国立近代美術館で開かれた。１７１点の作品はいずれも夢と喜びとユーモアにあふれたものばかり。ミロにひかれて名古屋から１２日がかり、車イスで走破した画家の伴野敏夫さんは、やっと念願が叶ったと迫力にうたれていた。

５０人の命をのんだ松山沖に今日も３００隻の船が捜索を続ける。この辺は潮の流れが激しく捜索は遅々として進まない。無惨に折れたプロペラがショックのすさまじさを物語る。１９６６年１１月２１日、現在収容された遺体はようやく３２体。変わり果てた肉親の遺骨を胸に呆然とわが家に向かう。まだ遺体のあがらぬ家族はせめて手がかりだけでも早くつかみたいと、食い入るような眼差しだ。現場を訪れた岡崎嘉平太全日空社長に詰めよる遺族の声は厳しい。また海が騒ぎ始めた。捜索は今日も打ち切られるのだろうが。冷たい海にまだ帰らぬ夫を、わが子を求める声が空しく消えて行く。

鹿児島県内之浦のロケット基地は、国産人工衛星第１号の打ち上げを前に緊張した空気に包まれている。６６度の角度で真東をにらむラムダ４Ｓ型１号機は、全長１７メートル、日本初の４段式ロケットである。４段目には人工衛星の夢をのせた直径４８センチの球形ロケットが収まっている。１９６６年９月２６日、ラムダ４Ｓ型１号機は不安と期待のうちに発射された。打ち上げは成功、ロケットは順調に切り離されて行った。しかし、最後の球型ロケットが方向を変えたため軌道に乗らず失敗。まだまだ宇宙への道は遠いようだ。

２０年に１度の伊勢神宮の遷宮ご造営に使われる用材のお木ひきが、戦後初めて復活した。１９６６年４月１２日、木曽の国有林から切り出された大木は、木遣り音頭にあわせてのどかに五十鈴川をさかのぼり、めでたく内宮に運び込まれた。翌日は勇壮な陸びき行事。古式豊かなお木ひき車に木を積んで、旧参宮街道を外宮に向かう。綱を引くもの５０００人。沿道を通るお木ひき車は威勢のいいかけ声にのって、次々と外宮正面に勢ぞろい。この行事は５月まで続き、伊勢の町はお木ひきムードに沸き立っている。

「戸締りと同時に火の元を確かめて下さい」と春の陽気に誘われて外出する人々に呼びかける消防署。外出先で火の不始末に気付いた時すぐ消防署に連絡すれば、直ちに署員が家まで急行する。行楽シーズンを迎えて賑わう観光地。水上温泉の惨事を２度と繰り返すなと、消防署が目を光らせている。宿に着いたら先ず非常口を下検分、寝タバコには気をつけよう。昔の人の言「治にいて乱を忘れず」、くれぐれも火事にご用心。

環状７号線と甲州街道が交差する東京世田谷の大原交差点は、１時間７０００台の車が通る日本一の難所。住民たちの間にはこのところ喘息の症状を訴える人がめっきり増え、厚生省は付近一帯を排気ガス汚染地区に指定した。危険の限界すれすれまで空気が汚染されているという調査の結果に、住民の健康診断を行ったら、７割近い人が排気ガスの影響を受けている恐るべき事実が判った。根本的な対策がないまま、住民は酸素吸入器などを買い込んでささやかな自衛体制。戸を閉めてもなおガスとほこりが忍び込む。大原交差点は今日も排気ガスの中に煙っている。