早くも秋の訪れを見た北見平野。農耕馬の産地として知られたこの地方も、農業の機械化につれ、馬がだんだん少なくなってきた。お盆が来ると中村清信さんは愛馬「コウリョク号」の手入れに精を出す。町に盆踊りのはやしが流れ、北見名物「ばんえい競馬」が人気を呼び、人も馬も町かねたように町に出る。予想屋も店を張り、北国のダービー気分を盛り上げる。滅び行く農耕馬の心意気を見せようと道内から集まった馬２００頭、いずれも力自慢の馬ばかり。距離２１０メートル、人も馬も死力を尽くして３つの障害に挑む。中村さんの「コウリョク号」は８０回も優勝した名馬で、この日の本命。ゴール寸前の追込みが成功、８１回目の優勝を飾った。年に１度の北見競馬が終って、間もなく実りの秋がやって来る。（町から村から）

昨年からもめ続けているカシミール問題解決のため、シャストリ・インド首相はソ連のあっせんでタシケントに向い、アユブ・カーン・パキスタン大統領と一週間にわたり話し合った。１９６６年１月１０日、共同宣言調印のわずか数時間後、首相は心臓マヒで急死した。インドはネール首相についで、また一人すぐれた指導者を失った。

岡山県久世町に住む田中浩士さんは、タバコの空箱をつかって手芸品を作るので有名。田中さんにとって空箱を集めるのが１苦労。５百個の空箱をつかって組み立てられて行くお寺の山門。自慢の傑作は「菊の花壇」。また２５００個の空箱で出来た「大阪城天守閣」。とても８１歳とは思えぬ元気な芸術家だ。

最近めっきり増えた共稼ぎ。今の世の中で人並の生活をするにはこうしないとやって行けない。そこで何処の保育所も満員だ。しかしその数は少ないし保母も足りない。公立の保育所は数えるほどだし、１歳未満は預からない。「もっと家の近くに小さくてもいいから保育所がほしい」。せっぱつまった親たちが、金を出し合って作った無認可の保育所は東京だけで１００を越す。保育時間も長く、１歳未満もと大助かりだが、無認可のため都や区の補助もなく、１万円前後の高い保育費でも台所は常に火の車。また働きに出たくとも、保育所が無いため困っている母親も多い。物価が上がり、サラリーも上がらぬならば、せめて子供を預けるところだけでも。ポストの数ほど保育所がほしい。これが働く母親たちの願いだ。

この夏の内閣改造で、運輸大臣の椅子が転がり込んだ荒船清十郎氏は夢かとばかり喜んだ。しかし、余りの嬉しさに「ひとつ位はええじゃないか」と深谷に急行を停車させたのがひとつ位では済まされず、上野駅の地下食堂拡張問題や田中彰治との黒い噂、日韓経済閣僚会議に民間業者を連れて行ったことも暴露されてしまい、ついに更迭と決まった。荒船氏は同じ川島派の藤枝泉介氏に、大臣の椅子を明け渡した（１９６６年１０月１１日）。わずか７２日にして荒船氏は、大臣落第生となった。桐一葉落ちて天下の秋を知る。佐藤内閣への風当りはこのままでは収まりそうもない。

１９６６年１月１１日、青森県三沢市の中心部から出火。おりから２０メートル以上の強風にあおられて見る見るうちに燃え広がり、全市の４分の１にあたる４５０棟を焼いて午後８時過ぎやっと鎮火した。着のみ着のまま逃げだした市民は米軍基地内に避難、恐怖の夜を過ごした。原因はガスコンロの不始末からと見られているが、３万５０００人のこの町に消防車がわずか１０台しか無かったというお粗末な消防力にも問題があるようだ。市民はこの冬をどうして越そうかと不安にくれている。

長野県八方尾根の夜明け、雲も凍り付くような朝。朝日にはえる北アルプス白馬連峰。新雪を踏んで尾根をつたうスキーヤーの群れ。海抜２０００メートル、麓を目指してまっしぐら、初滑りの醍醐味を味わう。ゲレンデは花盛り、その中を我が物顔にすっ飛ばす神風スキーヤー。毎日数１０人もけが人が出てパトロール隊も面倒見切れない。行きはよいよい帰りは恐い。皆さんもご用心。

環状７号線と甲州街道が交差する東京世田谷の大原交差点は、１時間７０００台の車が通る日本一の難所。住民たちの間にはこのところ喘息の症状を訴える人がめっきり増え、厚生省は付近一帯を排気ガス汚染地区に指定した。危険の限界すれすれまで空気が汚染されているという調査の結果に、住民の健康診断を行ったら、７割近い人が排気ガスの影響を受けている恐るべき事実が判った。根本的な対策がないまま、住民は酸素吸入器などを買い込んでささやかな自衛体制。戸を閉めてもなおガスとほこりが忍び込む。大原交差点は今日も排気ガスの中に煙っている。