銀行員の橋本は、医療ミスから記憶を蓄積できない“ウェルニッケ脳症”を煩ってしまった。彼は新しい記憶を蓄積できない。自分の存在を確認できない夫のために妻は、消えて行く二人の時間をノートに記す。◆ある日、橋本は勤務先の銀行のミニコンサートを大成功に導く。彼は大学時代、オーケストラに所属していたのだった。たとえ自分の中に記憶が残らなくても、いっしょに過ごした人の心に思い出を残す生き方もあるのだと、希望を見出していく。平成１０年度ＮＨＫ札幌放送局オーディオドラマ脚本募集・入選作。脚本：今井雅子。出演：木藤玲子、斎藤歩、岡田雅夫ほか。

ふるさと自然主義特別番組の第４弾。日常生活に密着した環境問題に関するミニ知識や情報を、ドラマ形式のＱ＆Ａも交えて分かり易く紹介する。出演は煙石博、池田秀昭、和佐由紀子。

病気と闘いながら作品を残した作家の自伝的ドラマ。◆６０歳で咽頭ガンのため声を失い、以後、己の生と死を見つめた小説を書きつづけた石和鷹。壮絶な闘病生活を通して、近づいてくる死を意識しながら生の証を克明に記した彼が、ついには死をも許容できる「人間の底知れぬしたたかさ」を体得するまでを描く。原作：石和鷹、脚本：ミラーカク子、音楽：栗山和樹。出演：夏八木勲、左時枝、香川京子ほか。

いま世界は政治、宗教、民族の違いによる争いが後を絶たず、日本では民衆不在の政治が深刻である。民族対立、意見対立など、別々の方向を向いた人々が「和」を作ろうとする時、いかなる努力が必要なのだろうか。また、民衆の立場に立った政治哲学、それを支える活力は何なのだろうか。ガンジーが亡くなって半世紀、彼が今も発信し続けているメッセージを検証する。講師は名城大学の森本達雄名誉教授。

１９９９年・卯年に「イソップ物語」時代から時を越え、うさぎとカメが月面でリターンマッチをするというファンタジー。月からのラジオ実況中継という設定のなかで、世界各国に伝わる「うさぎとカメ」の多彩なバリエーションを紹介。注目の再試合は、現代社会を反映しつつ競われる。第３８回前島賞受賞。

昭和３０年ころまでの日本の暮らしを「山」と「川」という視点から見直してみようという、ラジオ市民講座のプロローグ。岐阜大学教育学部の伊東久之助教授が講師を務める。◆第１章は炭焼きやいかだ流しのエピソード。第２章は飛騨の匠の歴史的意味や、「とび」という道具をキーワードにした都とひだを結ぶ暮らしの系譜。第３章は織田信長の天下統一における川の舟運にまつわる経済戦略。◆第１４回国民文化祭（１９９９年岐阜県で開催）「山の生活、川の生活文化展」の一環として制作された番組。これに続く各論編を１０回にわたって放送した。

犯罪や事故の被害者や遺族には、その被害による心の傷とともに、事件に伴って起きる警察や報道機関との関係、被害に伴う治療費や収入の減少など、大きな負担がのしかかる。しかし日本では、これを支援する対策は極めて貧弱な状況に置かれてきた。富山市にある被害者・遺族の集まり「小さな家」や、松本サリン事件の被害者・河野義行さんへの取材を通して、対策の必要性を訴える。

地図を足の裏で捉え直してみようと、東京「山の手」を地形をなぞりながら散策する。高輪・白金台界隈を歩くと、台地の尾根にあるお屋敷街と谷間にある庶民の暮らしが交差して、東京の成り立ちがまるで地層のように見えてくる。出演は「東京山の手ハイカラ散歩」の著者・大竹昭子ほか。