３０歳のともえは突然、母親から死んだ父が帰ってきたと知らされた。実家に行くと、そこには８年前、５９歳で死んだはずの父がいた。ありえない、これは現実だろうか、それとも家族で見る幻だろうか。奇妙な出来事をきっかけに、夫の浮気への疑い、母や兄夫婦への感情など、日常生活に潜む感情があらわになる。人生の儚さと、変わりなく過ぎ行く現実の無常さの中で、束の間の喜びと「生」への愛おしい思いを描くヒューマンドラマ。原作：藤野千夜、脚色：小松與志子、出演：西尾まり、天野鎮雄、梅沢昌代、ほか。

論語の中に「有教無類（教えありて類なし）」という言葉がある。この「人は何を学び得たのかが大切で、その人の出身・身分（類）が大切なのではない」という考え方は、自らも視覚障害者で、天津市で視覚障害者に日本語を教える日本人・青木陽子さんの教育理念でもある。青木さんの開いた学校では意欲があれば障害の有無に関らず受け入れ、障害者と清眼者（健常者）が共に学んでいる。青木さんとの出会いをきかっけに、中国人女学生の郭一娜は点字を学び、点字日記をつけるようになった。この日記を基に、天津市視覚障害者日本語学校の様子、郭が日本留学中に訪ねた同校出身者の京都での生活の様子など、日本と中国で出会った視覚障害者の挫折と夢を描く。第６２回文化庁芸術祭参加番組

稗田阿礼が語り、太安万侶が記録した「古事記」。この日本人のルーツに迫る最古の歴史書誕生にまつわる物語。「神代篇」「まほろば篇」に続く完結編。（全２回）◆第２０代天皇（すめらみこと）安康天皇の弟オホハツセは、血なまぐさい皇位継承争いの果てに即位する。後の雄略天皇である。一方、安万侶と阿礼の編纂作業の裏では、謀略の魔の手が伸びていた。二人は古事記を完成させることに、互いに命をかけるまでにのめりこんでいく。しかし、運命は過酷な事態を二人に突きつけるのだった。作：市川森一、音楽：小六禮次郎。語り：加賀美幸子、出演：石坂浩二、戸田恵子、江守徹、ほか◆文化庁芸術祭参加

徐々に消え去ろうとしている生の栃木弁を実際の話し言葉で残しておくことを目的に、大田原市のインターネットサイト「まいぷれ那須」掲載の「栃木のおもしろ会話集」の中から栃木弁日常会話を現地録音で再現。栃木弁の日常劇は栃木弁の研究サークル「よかんべ村」のメンバーが演じる。会話劇は、会社やご近所、家庭など１８の場面を設定し、各場面について進行役の嶋均三さんが言葉の意味や会話の内容について解説する。リスナーも一緒に発音を学べる語学講座形式の構成である。よかんべ村の人たちは全て素人。また嶋さんと「まいぷれ那須」の編集長が栃木弁に対する熱い思いを語る。

ナビゲーターに俳優の山本太郎を迎え、日本の神楽や歌舞伎に今も息づく日本人のリズム感と、民族を越える太鼓の音色の魅力に迫る。そして、外国人和太鼓奏者や石川県での太鼓づくりを追いながら、山本さんも太鼓の演奏に挑戦する。太鼓には音階もないが、木と革から生み出されるその音色は人を魅了する。出演：山本太郎、田中伝次郎、田中佐太郎、マイケル・ネイシュタット、三上敏視

大阪に唯一残るチンチン電車・阪堺電気軌道。合併などの紆余曲折を経ながら、１００年以上大阪の街を走り続けている小さな電車だ。路面電車は昭和２０年代に乗客数のピークを迎え、それ以降は乗客が減り続けているところが多いが、一方でその長所を見直す動きもある。海外では、環境にも人間にも優しい次世代型路面電車ＬＲＴが各国に登場している。日本でも、富山県でＬＲＴが開業し、導入を検討する自治体が増加傾向にある。路面電車は、ノスタルジックな乗り物として残っていくのか、それとも省エネルギー時代の乗り物として新たな道を模索するのか、今後の方向性も考える。◆語り：和田麻実子、旭堂南海

前年に放送された「芝浜」に続く、全編生放送のドラマ。台詞、音楽、効果音、ナレーションなど全て、ホールの観客の前で生み出される。◆物語は江戸時代と現代の二組の夫婦を行き来しながら進む。道具屋の文三は商売下手。今日もつまらない太鼓を仕入れたと、おかみさんに叱られた。ところがこの太鼓の音が大名の耳に留まり、大金で買い上げられることになる。一方、かつやとまゆこは夫婦で弁当屋を営んでいるが、なかなか注文が取れない。

これまでの「にっぽん音めぐり」の中から、反響の大きかったものをアンコール放送する。（５日連続）◆宮島から佐田岬半島へと、瀬戸内の風物とそこに暮らす人々を訪ねる。宮島では、宮太鼓が響く厳島神社に観光客の活気が溢れ、紅葉谷公園では野鳥がさえずる。松山市からは中央卸売市場の朝市、五十一番札所石手寺の鐘とお遍路さん、道後温泉前の放生園の湯釜と足湯、坊ちゃん列車の汽笛、西日本最古の小学校である開明学校での明治時代の模擬授業。そして佐田岬半島からはデコポンの収穫、裂織り（さきおり）などを紹介する。語り：広瀬修子、大沼ひろみ（初回放送２００５年の再放送）