ヴォイストレーナー松原徹を通して、人の声の力を見つめる。◆岡山駅西口からほど近い岡山済生会ライフケアセンターの４階、カリスマヴォイストレーナー松原先生の歌の教室が始まる毎週月曜の夕方は、ここに入所している多くのお年寄りで埋まる。この日の課題曲は水森かおりの新曲「ひとり薩摩路」だ。お年寄りたちは耳で聞いて覚え、「もういっぺんいきましょう」を何度か繰り返しながら、やがて大きな歌声となっていく。お年寄りたちの瞳が輝き、表情が生き生きし、背筋が伸びる、と看護士たちは声をそろえる。ヴォイストレーニングの持つ力と、人間松原徹の魅力に迫る。

富山市で昭和３０年（１９５５）から続く春の風物詩「全国チンドンコンクール」誕生までを描くドラマの後編。◆親方の放蕩のせいで空中分解したチンドンの元締め新宿芸能社だが、メンバーはやっぱりチンドンが忘れられない。一方富山では、チンドンコンクールへの熱い思いの理由が悲しい戦争体験にあることがわかり、次郎と陽子は共感し合う。また偶然、次郎の独白を聞いた兄で芸能課長の高柳義明は、対立する上原麗子に土下座してチンドンコンクールの許可を請う。芸能社内でも戦争体験が語られ、気持ちがひとつになっていく。そして昭和３０年春、復興なった富山の町に、チンドンの鉦と太鼓が鳴り響く。原作：羽原大介、脚本：水上竜士、出演：栂安亜紀、武道優美子、佐藤栄治ほか

放送記者、ノンフィクション作家として生と死を見つめ続けてきた柳田邦男氏が、自らの人生を振り返り、ジャーナリストとして考えてきたことや、若い世代へのメッセージを伝える。（３回シリーズ）◆第２回は生と死に焦点を当てる。柳田さんは幼少期に家族を結核で、親族を戦争で失った。戦争を語る際は何人が死んだかではなく、亡くなった一人一人の人生を追う。また、がんは結核に替わる国民病と考えて取材を続けてきた。柳田さんは、次男が自ら命を絶つというつらい体験もした。気付いた時の思い、立ち直るまでの心の変化を振り返り、死とは無になることではなく、生きる者に永遠に語りかけ、自分を鍛えてくれるのだと語る。

この番組のパーソナリティは、ハン・カクサイ。秋田県で活躍する地産地消ヒーロー“超神ネイガー”の敵役で、カメムシの姿をしている。彼が秋田放送の電波を乗っ取り、県民をだじゃく化（悪い方向に導く）するために始めた番組が「電波ダジャック！」である。２００６年に秋田放送のラジオでレギュラー放送され、人気を博したものの、惜しまれながら終了。今回の特別番組放送に至った。ヒーロー超神ネイガー誕生までを描いたラジオドラマ（このドラマではハン・カクサイは“やられ役”）を挟みながら、メール紹介や生電話でリスナーと結ぶ。パーソナリティ：ハン・カクサイ、松井梨絵子

２００７年１１月１３日に急逝した元西鉄ライオンズの大投手、稲尾和久さんの追悼番組。稲尾さんは現役時代は「神様、仏様、稲尾様」と称され、引退後もＲＫＢラジオ・テレビで野球解説や番組出演で活躍した。在りし日の思い出を振り返りながら、縁の方々にエピソードを聞く。また、３１年前にＲＫＢラジオで制作した稲尾さんの特別番組から当時の本人の肉声、日本シリーズで奇跡的な優勝を飾った時の実況、この特別番組でインタビュアーを務めたみなみらんぼう氏が作った曲「背番号２４」、稲尾さんの最後のＲＫＢラジオ出演時の声も紹介する。出演：中西一清、鬼橋美智子◆ＲＫＢラジオ特別番組

詩人のアーサー・ビナードさんは、ラジオ番組出演のため毎週青森を訪れる。自然を愛する彼はいつしか目の前にそびえる八甲田連峰に心を惹かれる。まだ雪深い４月、八甲田中腹で山荘を営む芦沢吉朗さんの案内で、初めて八甲田に登る。山男と詩人が山中で二日間過ごして見つけたもの、それは今までに聞こえなかった「山の声」だ。山麓のブナ林を吹き抜ける風は、いつしかブナの根元に「ねびらき」をつくり、やがて春が訪れるという。そんな芦沢さんの説明に、詩人は北米の先住民族・モホーク族の『春分』の詩へと思いを馳せる。そして猛吹雪の山頂で、麓では気付かなかった春の姿を発見する。そこから市街を見下ろし、山とは何か、街とは何かを問い掛ける。

陸上競技が趣味の山川文康さんは長寿の島・沖縄を代表するスーパーおじーちゃん。十種競技（デカスロン）のアスリートとして数々の大会に参加し、たくさんの賞メダルを獲得してきた。◆２００６年１１月、８５歳の誕生日に山川さんはいくつかの決意表明をした。そのひとつが翌年９月の世界マスターズ陸上競技イタリア大会に出場することだった。番組ではその後の日々の生活やトレーニング風景、怪我によるハプニング、そして見事な結果を残した世界マスターズ大会の本番を追う。◆さらに妻の視点から山川さんの元気の源を描きつつ、「健康のために運動をしている」のではなく、「健康だから運動ができる」という山川さんの人間味溢れる人生観も追求する。子や孫たち、アーティストのしゃかり、仲田かおり、下地勇が協力して山川おじーちゃんにおくった楽曲も紹介。第６２回文化庁芸術祭賞参加番組。

戦争体験者の生の声を伝えるインタビューシリーズ。今回は元特攻隊員の佐藤孝一氏に話を聞く。◆佐藤さんは学徒出陣で海軍航空隊に入った。特攻隊の募集があり、熱望か希望か拒否か選ぶように言われ、「超熱望」と書いた。軍国教育を受け、国のために命を捧げたいという気持ちになっていた。しかし、隊員に選ばれ、残り６０日の命と告げられた時は、心臓ががーんとなった。出撃を待つ日々、隊員たちは明るかったと言う。佐藤さんはやがて出撃を命じられるが中止となり、終戦を迎えた。戦後、死んだ仲間が夢に出てきて「お前だけ生き残って。腹を切れ」と軍刀を差し出され、そこで目が覚めるのだと言う。（インタビューの部分のみを収録）