大正から昭和、平成に至るまでの家族の歩んできた道を、作者の目線から温かく描く。◆詩人・齋藤恵美子の詩集『ラジオと背中』は、曽祖父の代から自分に至るまでの家族史を縦糸に、祖父母や両親の戦争体験を受容する自身の内面を横糸にした詩を多く所収している。家族の会話を基調とした口語体の詩を、複数の俳優によって私（作者）、父、母、祖父母、幼少時の「私」等、多声的に演じ（読み）分ける。そして、音響効果や音楽を織り込みながら、ドラマとして再構成していく。◆作：齋藤恵美子、出演：若村麻由美、山本學、鈴木瑞穂、ほか。

この年１月に就任した橋下徹知事が打ち出した財政再建計画には、府職員の賃金カットのほか、府の施設の廃止・売却を含めた大幅な見直しが含まれていた。知事は「子どもが笑う大阪に」と選挙で訴えたが、ドーンセンター（府立女性総合センター）、児童館ビッグバンなど、弱者のための施設も対象となった。ワッハ上方（府立上方演芸資料館）の見直しにはベテラン芸人たちも署名活動に立ち上がった。一方、５兆円の負債を放置できないのも事実である。これまでの府政が遺した負の遺産のために府民の暮らしが犠牲になっても良いのか。改革を進める知事と、その改革によって見直しの対象となる施設に携わる人々の苦闘を追う。

１９９８年に開催された長野冬季オリンピックから１０周年を記念して制作されたラジオドラマ。出演者は公募で選ばれた市民である。（１月６日～２月２４日放送・全８回）◆定年退職を間近に控えた寛之は、自分の中にあったかつての情熱が薄れていることに不安を抱いていた。ある日、妻の美加と古いアルバムを開くと、長野オリンピックの写真が出てきた。ボランティアとして大会の成功を支えたあの日々。二人はいつしか１０年前にタイムスリップする。◆脚本：川崎史郎。出演：近藤隼、中村裕子、篠原遥香、細川貴司、ほか。第１話「始まりの予感」、第４話「悲しい別れ」、第７話「ありがとうのメッセージ」の３回分を公開。

平日午後の報道番組「バイブル」が、長年ＨＩＶの啓発運動を続けているＬｉｖｉｎｇ　Ｔｏｇｅｔｈｅｒ計画と共同で、ＨＩＶ／ＡＩＤＳについて考える。◆５月２８日放送分では、うつ病の妻と彼女を支える夫の１０年間を描いた映画「ぐるりのこと」に主演したリリー・フランキーを迎え、痛みと共に、それでも生き続けることを話し合う。６月９日放送分は、ＨＩＶ陽性者や周囲の人の手記を著名人が朗読したイベント「ポエトリーリーディング」の模様をダイジェストで伝える。リリー氏は、偏見は無知で教養がないことであり、人のつながりと知識が大切と訴える。

道頓堀にこだわり、そこで三味線を弾き、唄い続ける芸人、暁照夫の半生を、道頓堀の変遷に重ねて描く。◆四国の天才浪曲少年、暁照夫が大阪にやってきたのは２０歳の頃。道頓堀では再開場した角座にダイマル・ラケット、かしまし娘らが出演し、日本一の演芸場として賑わっていた。浪曲人気は下火になり、暁照夫らは３人で宮川左近ショーを結成。節と笑いを織り交ぜた舞台で人気をよび、角座のトリをとるまでになる。暁照夫の売り物は、三味線の早弾きと「なんでこんなに巧いんやろ」の決め台詞だ。だが、リーダー宮川の死でトリオは解散、時代の変化で道頓堀でも歴史ある劇場が次々閉館になる。それでも暁照夫は舞台に立ち続けた。そして芸能生活６０年目の２００８年、Ｂ１角座の閉館が決まり、道頓堀五座３５０年の歴史に幕が下ろされる。

熊本市の住宅街のゴミステーションでは、資源ゴミの中からアルミ缶だけが持ち去られる“事件”が相次いだ。中国やインドで需要が高まり、アルミ缶が１キロ７０円から１４０円に急騰。そこに目をつけたのが、日銭を必要とするホームレスや低所得者達だった。一日拾い集めた収入は１０００円から３０００円ほど。ホームレス同士の“なわばり争い”も激しくなった。一方、アルミ缶をあさる騒音や、本来は熊本市の収入となるはずの資源ゴミ売却益の減少も問題になった。熊本市は資源ゴミの持ち去り禁止条例を打ち出した。違反者には最高２０万円の罰金が課せられる。空き缶拾いを唯一の収入源としている人たちの姿を追う。

幅広い分野から講師を迎え、日本語をユニークな視点から捉える「私の日本語辞典」。３回シリーズで国語学者の松井栄一さんに、祖父から三代にわたる辞書作りについて聞く。第２回は前回に引き続き、祖父、父から引き継いだ辞典の増補作業について、その細やかな手順と、辞書作りの喜び、苦心を聞く。「用例は辞書の生命である」という信念で進められる辞書作り。用例を採取し、カードを作成し、見出しとする語を選んでいく。５０万語という膨大な言葉との格闘である。その成果は「日本国語大辞典」として結実する。

嘉門達夫を迎えて、大阪万博とその時代の思い出、そして彼の私小説を原作とするドラマで構成する開局５０周年特別番組。◆第２部は、嘉門達夫と友人の熱い絆を涙と笑いで描いたドラマ。ある日、嘉門は高倉から「肺ガンで余命３ヶ月」と告白される。二人は小学校以来の長い付き合いだった。嘉門の胸に、地元茨木で開催され、通い詰めた大阪万博の思い出が去来する。アメリカ館の月の石、初めて食べた生のパイナップル、高倉らと競争したパビリオンのバッチ集め。嘉門は、面白いことの好きだった高倉のため、残された日々を楽しく過ごさせようと奔走する。原作・語り：嘉門達夫、脚本：山本雄史、出演：小松健悦、村上かず、梶山文哉、梅田千絵、ほか