道頓堀にこだわり、そこで三味線を弾き、唄い続ける芸人、暁照夫の半生を、道頓堀の変遷に重ねて描く。◆四国の天才浪曲少年、暁照夫が大阪にやってきたのは２０歳の頃。道頓堀では再開場した角座にダイマル・ラケット、かしまし娘らが出演し、日本一の演芸場として賑わっていた。浪曲人気は下火になり、暁照夫らは３人で宮川左近ショーを結成。節と笑いを織り交ぜた舞台で人気をよび、角座のトリをとるまでになる。暁照夫の売り物は、三味線の早弾きと「なんでこんなに巧いんやろ」の決め台詞だ。だが、リーダー宮川の死でトリオは解散、時代の変化で道頓堀でも歴史ある劇場が次々閉館になる。それでも暁照夫は舞台に立ち続けた。そして芸能生活６０年目の２００８年、Ｂ１角座の閉館が決まり、道頓堀五座３５０年の歴史に幕が下ろされる。

将来を期待されながら戦火に散ったプロ野球投手・石丸進一の半生を描くラジオドラマ。この日５月１１日は石丸が特攻隊員として出撃した日である。◆今年もペナントレースが開幕し、ドラゴンズに連覇の期待が高まる。そんなドラゴンズの前身「名古屋軍」のエースとして活躍した石丸進一。彼は佐賀商業を卒業し、家の莫大な借金を返すために職業野球の道を選んだ。ノーヒットノーランなど輝かしい成績を残すが、時代は石丸に野球を続けさせなかった。徴兵逃れのために日大に籍を置くも、学生の徴兵免除が解かれ、彼も航空兵へ。予備学生と呼ばれた学徒出陣組に対する執拗な体罰などの不条理に耐え、ただひたすら再び野球ができる日を夢見るが、ついに出撃の命が下り、名古屋軍球団代表から贈られた真っさらなボールで最後のキャッチボールをした後、沖縄へ向けて出撃していった。原作：牛島秀彦、脚本：芳賀倫子、出演：伊藤一成、青山高志、生島織部、松田つぎ子、ほか

西田敏行と竹下景子による二人芝居の文芸ドラマシリーズ。◆３７歳の月子は、７０代となった高校時代の国語の教師と飲み屋で再会する。月子と“センセイ”は、それから何度か一緒に飲むうちに、飲み仲間としての付き合いが途切れずに続いた。同じ時を過ごすうちに、“センセイ”に対する月子の気持ちは徐々に変化してゆく。年の離れた月子と“センセイ”の面白おかしく、時に歯がゆく切ない日々を描いた物語。（５回シリーズの第３回）◆原作：川上弘美、脚色：佐藤ひろみ

鹿児島県南九州市知覧町は、第二次世界大戦の時、陸軍の特攻基地として多くの若者が最後の時を過ごした。戦後６３年が過ぎ、戦争を知らない世代が増える中、映画や舞台で知覧を取り上げたものが増えてきた。この番組では、戦時下の知覧で暮らしていた方や元特攻隊員ら戦争体験者が、戦争を風化させないようにと知覧を語る。そして、戦争を知らない世代は知覧で感じたことを劇や歌で表現する。２００８年の知覧という場所を縦糸に、人々の活動を横糸に、タペストリーが織られていく。知覧は戦争を知らない世代に何を語り、何を伝え続けるのだろうか。

高濱虚子の私小説「虹」の主人公となった女流歌人、森田愛子の生涯を、再現ドラマと音楽、関係者の証言で綴る。愛子は大正６年、福井県三国町生まれ。外を歩けば誰もが振り返る聡明な北陸美人だった。鎌倉で結核療養中に伊藤柏翠と運命的な出会いをする。虚子の弟子である柏翠は、愛子に俳句を作ることを勧めた。愛子は柏翠に師事し、療養生活を詠んだ句が「ホトトギス」に入選するが、やがて戦争のため三国に帰り、柏翠も後に愛子の招きで三国で一緒に暮らし始める。虚子も愛子を見舞い、二人を金沢の句会に招く。愛子はその時、汽車の窓から見た虹を詠む。構成：越桐清司、音楽：楽衆玄達。出演：高島千枝、重盛政史、堀内茂昭、語り：谷戸礼子

「中四国ライブネット」は、中国・四国の８局がそれぞれのエリアの様々な情報を発信する番組で、今回は西日本放送の制作。◆２００８年、小豆島でオリーブの栽培が始まって１００年になる。小豆島は瀬戸の海に囲まれた風光明媚な島でもあり、寒霞渓の山々は秋になると紅葉が美しく、またあの名作「二十四の瞳」の作者、壷井栄の出身地としても知られている。オリーブ百年祭でイベントも目白押しの小豆島から、熊谷富由美、伊達典子、古茂田圭のかしまし三人娘が、選りすぐりのおすすめスポットを紹介する。登場するのは、新しくオープンした造り酒屋、オリーブ公園、肥土山農村歌舞伎舞台、千枚田、二十四の瞳映画村、ほか。

陶芸家の男が行方不明になり、３年前に離婚した元妻と娘が初めて男の部屋を訪れる。動物園を作ろうとシマウマを買ったり、金を捜しに南アフリカに行ったり、家庭を省みず自分勝手な男だった。二人は手掛かりを求めて留守番電話に残されていたメッセージを聞き始める。怪しげな儲け話や、離婚の原因になった女性からの伝言に失望する元妻。しかしメッセージを聞き続けると、彼女たちの知らなかった男の一面と生きざまが浮かび上がってくる。◆登場しない「あの人」を、周囲の人の声と留守電メッセージだけで浮かび上がらせる、ラジオならではのドラマ。作：土田英生、音楽：サキタハヂメ。出演：佐藤直子、後藤飛鳥、ほか。

秋田県大館市の菅原さんは、２０年にわたる病院勤務で１６００例ものお産を扱ってきたベテラン助産師だ。２００７年７月、自宅に助産院を開業した。妊婦が主体の自然な出産を実現したいという思いからだった。ところが、菅原さんの地域では「産科医が少ない」という理由から嘱託の医師を確保することができず、現在もお産を扱えない状態が続いている。隣の青森県では医師との連携が進んでいるため、お産を扱う助産院が５ヶ所もある。京都府では、国立病院の中に助産所を設置する取り組みがスタートしている。秋田県北部の大館市周辺では、産科医の不足が深刻化し、地元の総合病院は里帰り出産を断っているのが現状だ。全国的に減り続ける助産師の現状と課題を伝える。