“生きること”と“死にゆくこと”を常に見つめる終末期医療に携わる主人公が、かつて確執のあった人の死を看取ることになる。二人の感情の行き違いと葛藤、そしてその行方を情感豊かに描き、「寛容になりえない他者にこそ寛容であれ」というホスピタリティ（歓待）の視点に立った、人生の終末期を静かに見つめるヒューマンドラマ。◆加藤瑞希は、阪神間にある大学の内科病棟で主任看護師をしていた。１ヶ月ほど前、この病棟に井上という末期癌の患者が神戸の病院から転院してきた。献身的に看護する瑞希。だが、井上はかつて瑞希の親戚の隣人で、阪神大震災で亡くなったその親戚を巡って確執のあった人物だった。瑞希は当時の井上の非情な言動を思い出して苦悩する。◆作：芳崎洋子、出演：松岡依都美、笹野高史、ほか。

長野市生まれの杉本真維子さんは、２００７年度に詩の世界の芥川賞と称される「Ｈ氏賞」を受賞した。５０代でもまだ若手と呼ばれる詩壇において、３０代の若さでの受賞は、実に２０年以上ぶりの快挙であった。杉本さんはどのように言葉を選び、どのように推敲して、ひとつの詩を生み出しているのか、その過程を追う。詩の最初の言葉が自分の中に“降りてくる”時を、彼女は「詩の尻尾のようなものをつかむ瞬間」と表現する。つかんだ尻尾の先には何が見えるのだろうか。

のぶりんこと原田伸郎が日曜日の朝、これからどこへ行こうか、何をしようかと考えているリスナーに提案する生ワイド番組。◆５月１６日から２４日、神戸市立の学校は運動場も教室も静かだった。新型インフルエンザによる休校なのだ。朝起きて登校し、授業を受けて、友達とお弁当を食べる。そんな日常の素晴らしさを感じた一週間だった。普段の当たり前のことが幸せだと、子供たちも感じた。今回は、何気ないことに感じる幸せ、学校の思い出、学ぶことをテーマに進める。ゲストコーナーでは教育サポーターの中島さんに、育児、教育について聞く。中島さんは、ちょっとした心遣いで子どもも保護者も変わると例を紹介し、認めてあげること、待つことの重要さを語る。ほかにお取り寄せを紹介する「コンシェルジュ原田」、「番宣クイズ」などのコーナーで構成。

鳥取県出身の山田薫は太平洋戦争開戦の１９４１年、日本海軍の最新鋭の潜水艦「イ１６号」の艦長を務め、僚艦４隻と共に秘密兵器の特殊潜航艇を携え、ハワイ真珠湾に出撃。湾内深く潜入し、敵艦を魚雷攻撃するという極秘作戦を実行した人物である。没後５０年以上を経て世に紹介された彼の遺品の中には、当時の状況を知る貴重な日記や報告書、写真なども含まれていた。真珠湾攻撃で明らかになった特殊潜航艇とは何だったのか。２年をかけて遺品を研究した山陰歴史館の学芸員、梅林智美さんの解説を軸に、山田薫が残した真珠湾攻撃の記録を検証し、彼が伝えたかった命の尊さについて問いかける。

ＮＨＫ－ＦＭ放送開始４０年を記念した特別番組。１９７８年から１９８７年にかけて放送された人気番組「サウンドストリート」から、厳選した放送回を萩原健太の解説で４週にわたり送る。３週目は「甲斐よしひろ」特集。第１２回は１９８４年１月２５日（水）放送分を紹介する。◆この日の放送は、甲斐が独自の感性で歌謡曲の魅力を語る。

羽佐間道夫と井田由美による朗読番組。今回は向田邦子生誕８０周年とラジオ日本開局５０周年を記念して、通常の朗読ではなく、このほど発見された「アナタと夜のハーモニー」の台本を基に、両人の朗読で番組の一部を再現する。◆「アナタと夜のハーモニー」は、１９７０年ごろ脚光を浴びつつあった向田邦子さんが構成を担当した、ラジオ日本（当時はラジオ関東）の夜の番組。小林恭治のナレーションで、大人のエッセイ風の語りとしっとりした音楽が織りなす２０分間の癒しの時間を演出した。ラジオ全盛期に多かった、語りと音楽というラジオ番組の基本形である。番組の決め言葉「夜が美しいと思えれば、きっとあなたの愛も、涙も、時には別れも美しいでしょう。」など、後年の向田脚本の深い叙情を髣髴とさせる部分も織り込まれている。また、向田さんと交流の深かった故・久世光彦氏の随筆や番組にまつわるエピソードも紹介する。ほかに、向田邦子著「父の詫び状」より「子供たちの夜」の朗読。

３時間半のワイド冒頭は、その日の番組の方向性を決める中村こずえのコラム。その時々の社会的な出来事、日常的な出来事を数珠つなぎに展開し、身近な生活の一こまに落とし込んでいく。リスナーは記憶の引き出しを次々と開け、思い思いのメッセージを番組に届けてくれる。そのメッセージから、地域に暮らす人々の顔や家庭の姿が浮かび上がってくる。◆この日は横須賀に漂着したペットボトルに入っていた「たからの地図」の差出人が、静岡県河津町の少年だったという話題から始まる。キューバ、環境問題、一斗缶、昭和、醤油など、寄せられるメッセージをスタッフが選別、構成しながら、番組を展開する。

新潟県燕市に２００年以上前から伝わる燕鎚起銅器は、一枚の銅板を金槌で何度も叩いて継ぎ目のない立体を作り出す技法。主に茶筒や急須などの茶道具に使われ、海外にも愛好家の多い、新潟が世界に誇る伝統工芸のひとつだ。後継者不足に悩む伝統工芸が多い中で、ここでは３人の３０歳の若者が力強い発信をしている。２人は高校時代の同級生の金属工芸家、もう１人は型破りな学芸員。ライバル視される２人はあえて異なるフィールドで制作し、学芸員は「インディー」という名でメディアに積極的に出演し、燕鎚起銅器など新潟の文化を軽快に紹介している。仕事を離れると仲が良く、ものづくりについて語り出すと止まらない３人。伝統の技法があるから、今の自分があると語る。展覧会出品作の制作過程を追いながら、３人それぞれの鎚起に寄せる熱い思いを描く。