２０１４年夏に７４人の命を奪った広島の土砂災害。記録的な豪雨で住宅は次々と土砂に飲み込まれ、住民は救助を求めたが、警察や消防は溢れる水や土砂に阻まれ、現場にたどりつけない状態だった。中国放送が入手した広島県警の無線交信記録をもとに、広島土砂災害の過酷な現実を伝える。◆２０１４年８月２０日未明、県警本部の通信司令室は、鳴り止まない１１０番通報に混乱していた。通報は時間を追って、増水から浸水、土砂流入など、生命にかかわる切迫した救助要請へと変化していった。本部から指令を受けた警察官たちは救助に向かうが、土砂崩れや浸水で近づけず、豪雨と暗闇の中で無力感に打ちひしがれた。１年がたち、警察官たちは、どうすれば一人でも多く助けることができたかと振り返る。

福井県若狭町に住む長谷光展さんの祖父、諒卓さんは、１９４４年１０月、台湾航空戦で２９歳で戦死した。生前を知る祖母は戦争については子や孫に語らず、１４年前に８４歳で死去。光展さんの父、光城さんは当時１歳で、父親の記憶はない。しかし８年前に諒卓さんの遺品が親戚の家から見つかったのを契機に、父親への思いを強めた。やがて光展さんも加わり、祖父諒卓さんの足跡をたどり始めた。光展さんは二人の弟と共に、１００通以上残されていた祖父の戦地からの手紙を手掛かりに資料を集め、台湾の弁事処などに問い合わせた。その結果、祖父の遺骨が発見され、祖父が乗る戦闘機が墜落した様子を知る人まで見つかった。長谷さん家族は台湾に向かい、墜落現場で当時を知る人の話を聞き、手を合わせた。祖父の足跡をたどることで、過去の戦争を深く知ることになった光展さん。改めて戦争を後世に伝えていく大切さを強く感じ、その気持ちは大学生の長男にも受け継がれようとしている。

音楽評論家の吉田秀和さんは、１９７１年から２０１２年に亡くなるまで４１年にわたり、ＮＨＫ－ＦＭの人気番組「名曲のたのしみ」で解説を務めた。この中で放送されたシリーズ「ベートーベン　その音楽と生涯」（１９８８～９１年、全１０７回）から、吉田さんの名解説を厳選し、ベートーベンの不朽の名作と共に楽しむ。◆第４回は「弦楽四重奏曲　成長の総決算」と題し、青年期、壮年期、晩年でそれぞれ特徴づけられる彼の弦楽四重奏を中心に、室内楽を聞く。曲目は「弦楽四重奏曲　第３番　ニ長調　作品１８の３　第４楽章」ほか。

澤穂希選手は３７歳。サッカー女子日本代表として２０年以上活躍し、女子Ｗ杯ドイツ大会ではキャプテンとして優勝に導いたが、今季限りで引退を発表した。三浦知良選手は４８歳。Ｊリーグ開幕から現役の唯一の選手である。ベテラン選手二人の対談で、長いキャリアを振り返るとともに、澤選手引退の心境に迫る。◆引退は人生で大きな決断だったと語る澤選手。三浦選手は、年齢による衰えは認めながらも気力は充実し、今も常に全力でプレーしている。北京五輪での澤選手の「苦しいときは私の背中を見て」という言葉が心に残っているという。１５歳は二人にとって岐路となった。三浦選手は単身ブラジルへ渡り、澤選手は日本代表デビューを果たした。当時の思いを振り返る。サッカー人生で二人が共通して経験した海外挑戦、移籍、日本代表の重みなどについても語り合う。

青森県八戸市出身の村次郎（むら・じろう）は、幻の詩人と呼ばれている。生前世に出した詩集は、昭和２０年代に制作されたわずか２冊だが、彼の詩は文芸雑誌で高く評価され、将来の活躍が期待されていた。しかし、老舗旅館の長男だった村は、旅館をつぐため、若くして筆を折ったと言われている。その後は詩集を発表することもなく、地元でも忘れ去られていた。喜劇役者・十日市秀悦も八戸で三代続く食堂の長男として生まれたが、役者になりたくて上京し、３８年が経った。なぜ才能を認められた村が、詩人をやめて家業を継いだのか、その背景を求めて、十日市が村の郷里、八戸市鮫町を訪ねると、旅館はすでに解体されていたが、村を知る人々がいた。そして取材を進めて行くうちに、「旅館を継ぐため、筆を折った」と言われている村の、違った一面が明らかになっていく。彼は生涯、詩を書き続けていた。そして、詩の発表をやめたのは家業のためだけではなかったのだ。◆平成２７年度芸術祭参加（初回放送２０１５年５月３１日）

２０１５年、岡山市で初開催となったフルマラソン「おかやまマラソン」のラジオ中継。スタート前の午前８時からレース終了の午後３時まで、７時間ノンストップで生放送する。コンセプトは「最後の一人がゴールするまで全力応援」。一斉にスタートを切った１万５千人の市民ランナーを、バイク隊とラジオカーがレポート。市民目線の放送を目指して、沿道で応援する市民やボランティアの声を拾いながら、街全体の興奮を立体的に伝える。またスタジオからはリスナーから寄せられる応援メッセージや応援ソングで番組を彩る。上位でゴールに入ってくるランナーから、足を引きずりながら一歩また一歩と足を進める最後尾のランナーまで、１万５千人のランナーのドラマを出来る限り伝えていく。

第二次世界大戦で日本が負けると、朝鮮や中国、満州など外地にいた日本人は家も土地も家財も捨てて、一斉に本土に向けて引き揚げた。仙崎が引揚げ港に指定されると、小さな港町は総出で引揚げ者の援護をした。受け入れた引揚げ者は４１万人に上る。中谷貞女さん（９２歳）は、当時２１歳。本土の地に降りたった引揚げ者をお茶の接待で迎え、宿も提供した。お茶を勧めても故郷へのはやる思いで、「駅はどこ？」と尋ねる人が多かったという。中谷さんは当時を偲んで訪れる人に現地を案内し、依頼があれば講演にも出向く。一方、地区の婦人会の女性たちは炊き出しをした。雨が降る中も、冷たい風が吹く日も、大きなおにぎりをリヤカーいっぱいに積み、引揚げ者が上陸する港へと引いていった。長年、婦人会活動を続けている長井美智子さん（８１歳）のもとには、婦人会宛に届いたおにぎりの礼状が大切に保管されている。引揚げ港仙崎は、引揚げの歴史と町の人の思いやりを今に伝える。

福島県飯舘村の酪農家・長谷川健一さん（６１歳）は、福島県伊達市の仮設住宅で避難生活を続けている。東日本大震災以前は牛５０頭を飼い、４世代の家族で暮らしていたが、現在は別れて暮らしている。長谷川さんは、福島第一原子力発電所の事故を風化させないようにと牛舎で死んだ牛たちや除染土などの写真を撮影し、全国各地で公演を行っている。故郷を奪われた苦悩や、講演活動で伝えたいことなどを聞いた。