東京の大学に入学したばかりのナツは、帰省する友人・若菜と共に岐阜県恵那市岩村町を訪れた。岩村城を見学しようと急な坂を上がっていく途中に、下田歌子の碑があった。その石碑の前で会った若菜の祖母は、小さな村から立身出世を果たした下田歌子を語る。ナツは大学生になってもまだ自分の将来に漠然とした不安を持っていたが、若菜と共に下田歌子の人生に興味を抱いていく。実践女子学園の創設者である下田歌子は、わずか３万石の旧岩村藩から上京し、宮中に勤め、その才覚により皇后から「歌子」の名を賜ったほどの歌人でもある。西欧を視察し、「日本未曾有の女傑であり才色兼備」と謳われ、日本の女子教育の先駆者として活躍した。今では忘れられた彼女が目指したものは何だったのか。若菜とナツは彼女の波乱万丈の人生を追いかけていく。◆平成２７年度文化庁芸術祭参加作品

奄美群島は日本本土と沖縄の間に位置し、大和文化と琉球文化の影響を受けながら、独自の文化を築いてきた。戦後７０年の節目に、奄美の音楽文化の変遷を紐解きながら、奄美独自の島唄文化の特徴、魅力に迫る。◆奄美の島唄は、沖縄と異なり、集落の歌として歌われてきた。戦後、アメリカ統治時代には、物も食料もない厳しい暮らしの中で、「新民謡」が生まれた。本土復帰後は、日本民謡大賞で受賞者を輩出し、奄美の島唄は全国区となった。その後、沖縄発の音楽文化が隆盛をきわめたが、２０００年代には元ちとせ、中孝介などの登場で再び脚光を浴び、奄美は自信を取り戻した。島唄は変化しつつ、学校や民謡教室で若い世代に受け継がれている。終戦から現在までの奄美の音楽文化の歴史を、奄美出身の歌手、元ちとせさんの進行で、民謡研究家、唄者、歴史家のインタビューを交えながらたどる。

鹿児島県枕崎市出身のタレント“ちゃんサネ”が、“ヨンゴヒンゴ”（鹿児島の方言で、ずれている、ひん曲がった様）というテーマで、鹿児島のことや世の中のおかしなことなどを面白く斬る番組。方言や唄、一人芝居なども交えながら、独自の視点でリスナーに語りかける。◆４回分を公開する。まずは、改めて“ヨンゴヒンゴ”について解説している第３３回「人間万事ヨンゴヒンゴ」。続いて鹿児島の伝統の遊び“なんこ”を実戦形式で紹介する第１９回「ヨンゴヒンゴなんこ遊び」。さらに、鹿児島で開催中の「葛飾北斎展」にちなんで、北斎に仮想インタビューする第３０回「ヨンゴヒンゴの画狂人」。最後は、「夏山に登山する」などの二重表現・重複表現を取り上げる第２４回「ふとっこちゅゆうヨンゴヒンゴ」。

各界の著名人が、豊かな人生経験の中から語られるエピソードを通して、人間の素晴らしさや生きる力について講演した模様を放送する。◆今年はラジオ放送開始９０年、ＩＴ技術の革新やインターネットの普及によりメディアの有りようも変わり、存続の危機も叫ばれている。一方でグローバル化の甚だしい今日、情報の即時性、重要性はますます高まっている。わたしたちの放送がどうあるべきか、これからの放送とわたしたちの社会の有りようを問いかける。講演者は元ＮＨＫ記者、高知県知事も務めた橋本大二郎。

平日朝の通勤・通学の時間帯に、必要最小限の情報をパーソナリティの岩瀬惠子の優しく爽やかな声に乗せて届ける。（２０１２年１０月放送開始）◆今回の特集コーナーは、７０年前のこの日、ラジオ日本が所在する地元横浜に甚大な被害を与えた、第二次世界大戦での米軍による横浜大空襲について取り上げる。１９４５年５月２９日の午前９時台、Ｂ２９約５００機が東京大空襲よりも多くの焼夷弾を投下し、横浜の中心部は壊滅した。横浜で生まれて横浜で育った番組スタッフが、横浜大空襲の当時を知る地元の方を取材インタビューし、当時の様子や今こそ語り継がなければならない戦争体験者のメッセージを伝える。取材したのは、被害の大きかった南区、伊勢佐木町、黄金町で空襲に遭った方々。７０年を経た今も忘れられないあの日の記憶を語ってもらう。

１９６８年８月１５日、終戦の日の夕方、一人の青年が自ら命を絶った。彼の名は真喜屋実蔵（まきやじつぞう）。６歳の時にある事故がきっかけで失明し、文学者を志して早稲田大学に入学するも、生活の困窮などから人生に幕を下ろした。大学時代の彼を点訳などで支えたのが、友人の塩谷治さんだった。塩谷さんは盲学校の教員となり、晩年、真喜屋さんから預かっていた短歌や詩を集めて歌集『春想』を出版した。そして今年（２０１５年）２月、おきなわ文学賞の表彰式で、沖縄盲学校の生徒によって、真喜屋さんの作品が朗読され、封印が解かれた。戦後７０年の節目に戦争の不条理を伝えるとともに、真喜屋さんと塩谷さんを通して、障害の有無に関わらず、共に生きる喜びを伝える。

終戦から７０年の今年、福岡の一人の民間人によって、ミャンマー（ビルマ）に放置された日本兵４万５千柱の遺骨調査がようやく動き出した。日本政府は１９７６年以降、ミャンマーでの積極的な遺骨調査を行っていない。確実な情報がなければ調査をしないという方針と、長引く国軍と少数民族の内戦で遺骨が眠る地域に外国人が立ち入れなかったためだ。４０年近く閉ざされてきた遺骨収集への道を一人で切り開いたのが、福岡出身の僧侶、井本勝幸さんだ。２０１３年より数度にわたり、最も無謀と言われたインパール作戦の跡地をはじめミャンマー国内を調査し、崖下に放置された日本軍の戦車や、５メートル間隔で続く巨大な埋葬地群、日本軍のヘルメットと共に放置された複数の遺骨を確認。２０１５年３月までに少なくとも１８９０柱の遺骨の場所を特定した。なぜたった一人の民間人が調査をすることができたのか。そこにはミャンマーの少数民族から井本さんへの、ある「恩返し」があった。

大学ナンバーワンの帝京大学ラグビー部に所属する大塚貴之さんは、大分県臼杵市出身。生まれつき重度の難聴のため耳が聞こえない。しかし、自身の可能性を信じて、大学日本一のチームでプレーすることを選んだ。Ａチーム（レギュラー）として公式戦に出場し、全国の障がい者を勇気づけることが目標だ。しかし、思うように意思疎通ができず苦悩した。高校時代にしていた聴覚を補うための工夫も、大学トップレベルでは通用しなかった。それでもチームメイトに支えられ、ついに目標のＡチーム公式戦出場を果たす。チームメートもまた、大塚さんのひたむきな姿に影響を受けてきた。試合前日、監督は選手たちに「大塚の心の声を聞け」と語りかける。家族や友人との絆を通して、大学最後のシーズン、日々奮闘する大塚さんの挑戦を追った。◆ＯＢＳラジオ特別番組