昭和２０年２月に大阪放送局から電波に乗った陸軍の中部軍司令部（大阪）の空襲警報が、録音盤に残されていた。この録音を「明日へのことば」内で放送したところ、多くのリスナーから戦時の防空放送の記憶が寄せられた。「市民への激励メッセージがあった」、「放送員が敵機の動きを報告する監視哨に叱咤していた」など。警報を担当していた元アナウンサーの山口岩夫さん（９７歳）の証言（２０１４年８月９日放送）を再構成で送るとともに、放送史に詳しい元昭和女子大学教授・竹山昭子さん（８７歳）の解説で、当時のラジオが担った特異な役割に光を当てる。

毎年恒例の「新語・流行語大賞」で、２０１６年は年間大賞の「神ってる」をはじめ、「聖地巡礼」「トランプ現象」「ポケモンＧＯ」「ＰＰＡＰ」などのことばがトップ１０に選ばれた。また、リオデジャネイロ五輪でのメダルラッシュ、映画「シン・ゴジラ」「君の名は。」の大ヒットなども大きな話題を集めた。出版編集者で、ラジオ深夜便の「くらしの中のことば」出演者の一柳みどりさんが、１年を振り返り、話題になった新しいことばや流行語を解説する。

インパール作戦で知られる太平洋戦争の激戦地、ミャンマーには現在も４５０００柱の旧日本兵の遺骨がそのまま残されている。一日も早く帰還させようと独自で調査を続けているのは、福岡市出身の僧侶、井本勝幸さんだ。民間人でありながら調査できるのは、彼がこの地である貢献をして、「ゼロファイター」呼ばれるほど信頼を得ているからだ。地元住民の協力を得た井本さんは２０００柱の遺骨の埋葬地の情報を厚生労働省に提供し、３９年ぶりとなる国による遺骨調査収集へと動かした。２０１６年２月、井本さんは国の調査団をミャンマーの奥地へ案内した。国が動いたことでようやく、井本さんら民間人には許されていなかった遺骨の発掘、収容が始まった。戦没者遺骨収集推進法も成立した。しかし、すでの終戦から７１年が経ち、遺骨収集には困難が伴った。いち早い遺骨収拾に向けた課題を提起する。

１４歳の美少女りく。悲しみの意味はわからない。それでも、人前で自在に涙を流すことで、うまくやってきた。カッコいいパパと、美人で料理上手のママと「仲よく」暮らしていた。だが、あることをきっかけに、りくは関西の親戚の家に預けられることになる。ざっくばらんな関西人たちの中に突然放り込まれたりくは、「わたしは染まらない」と頑なになるのだった。ほしよりこのマンガ大賞受賞作のオーディオドラマ化。（全１０回）◆第１回。ある日、りくは、父親が浮気相手とペットショップから出てくるところを目撃する。

東日本大震災から５年に際して、被災地に思いを寄せる人々へのインタビューを特集する。１日目の今回は、故郷・宮城県塩竃市の復興を支えようと奔走する写真家の平間至さん。◆平間さんは、祖父の代から写真館を営む家庭に生まれ育った。愛する「音楽」にまつわる写真を数多く撮影する一方で、家族や故郷といった身近な被写体にも焦点を合わせている。震災当時、東京にいた平間さんは故郷の被災にひどく心を痛め、「何かしら行動を起こさなければ自分が壊れてしまいそうだった」と語る。現地で目にした光景は予想をはるかに超え、当初は写真を撮ることができなかった。自分が受容できないものを撮影してはいけないと悟ったと話す平間さん。写真家として多忙を極め、東京で写真館を開いた今もなお、故郷・塩竃を思いカメラを手にする平間さんに、幼少期から故郷への思いまでを聞いた。

戦後７０年となった２０１５年、フィリピンの海底から戦艦武蔵が発見された。武蔵は日本海軍の秘密兵器として極秘に開発され、資料もほとんど残されていない。番組ディレクターの父親は武蔵の元乗組員だった。甲板士官として、艦の軍機、風紀を取り締まっていた。しかし息子には武蔵や戦争についてほとんど語ることなく、６年前に他界した。だが父親が戦争について語る録音テープが見つかった。「戦艦武蔵」の著者の取材に応じていたのだ。父はどんな戦争を体験し、何を思っていたのか。音声記録を元に、江田島、長崎、フィリピンなどへと父の戦争をたどり、戦争の本質や、世代を超えて戦争の記憶を刻む意味を考える。

約１５０棟を焼失した糸魚川大火の発生から２日、ようやく一時的に立入禁止が解かれる中、関係者と電話でつなぎながら、現状を伝えるとともに、今後を考える。スタジオには都市計画や都市防災が専門の長岡造形大学の澤田雅浩准教授を迎えた。まず、現場からの記者レポートや、当日被災現場に入り調査を始めた防災・危機管理アドバイザーの山村武彦さんの話で被災地の現状を伝えた。そして、高齢者が多かった商店街で被災した夫妻に、現状や不安なことを聞く。さらに、老舗和菓子店を営む安田さんには、営業再開が町の活気につながることを伝えた。市の対応や市街地の再建については、市の災害対策本部に、喫緊の課題と、今後の対応について聞いた。それらの話を受けて、澤田准教授が、同様に町の再建に取り組む例を紹介しつつ、糸魚川市の中心市街地の再建のために、望まれる道筋と考えられる問題点を解説する。

水俣病の公式確認から６０年。水俣病は、地域の人々にどんな被害をもたらしてきたのだろうか。また、２０世紀最大の環境汚染事件ともいえる未曽有の公害事件は、私たちに何を問いかけているのだろうか。患者や関係者の肉声を手がかりに専門家とともに事件史をたどり、その現代的な意味を考える。出演は、富樫貞夫さん（熊本大学名誉教授）、岡本達明さん（元チッソ第一組合委員長）、高峰武さん（熊本日日新聞社　論説主幹）。