７５歳の松吉と竹造は、街では有名なコンビで、祭りやイベントでマジックや漫才を披露してきた。いつも失敗続きのステージだけど、自分たちのパフォーマンスが世界を救うと考えている。お騒がせだが憎めない二人組だ。ある日、竹造が入院し、松吉はロックンロールで竹造を励まそうと、ギターを手に入れた。子供の頃から、やんちゃな父・松吉を見て育った息子の直文は、ロックに染まる７５歳の父親を苦々しく思っている。近所の人から松吉が公園でギターを鳴らしていると聞いた直文は、恥ずかしさからギターを取り上げてしまう。しかし、松吉はこれしきのことで挫けず、ギターをタンバリンに持ち替えて竹造の病室で即席ライブを決行し、大騒ぎになる。怒鳴り込む直文、その場を収める看護師の梅子、見つめる孫の翔太。一途な松吉の破天荒な行動が、周りの人々の思いに波紋を投げかける。

岩手県盛岡市の星幸子さんには、重度の聴覚障がいがある。公務員として働き、一人娘を大学にやり、充実した毎日を送っている彼女が、今、密かにトライしていることがある。それは、歌うこと。子供の頃から、相手の口の動きを見て、話を読み取る読唇術の訓練を受けてきた。発声練習にも励んできたので、話すことは流暢だ。しかし音楽は難しく、合唱はいつも口パクで、歌うこととは無縁だった。厳密に言うと、今より聞こえの残存能力があった小さな頃は、歌っていたのかもしれないが、本人にその記憶はない。そんな星さんが、自作の詩に曲をつけてくれたアマチュアミュージシャン花立純さんと出会って、「自分も歌いたい」と思い立った。花立さんが先生役を買って出て、彼女は未知の世界へと踏み出した。自分の声も聞こえない星さんは、音なき世界で懸命に音をつかまえ、そして、歌う。雲をつかむような練習の末、星さんに生まれて初めて、人前で歌う機会が訪れる。

後世に残しておきたい、「時代を創った」声優たちにインタビューするシリーズ。これまでに歩んできた道のりや、「声」に対する思いを聞く。◆玄田哲章さん（６７歳）は、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルベスター・スタローンの吹き替えをはじめ、数々のアニメやゲームにも出演してきた。この道に進んだきっかけ、様々な作品の思い出、ようやく果たしたシュワルツェネッガーとの対面などについて語る。

少子化が社会問題になる中、愛知県に住む榎本知久さん、あきこさん夫婦は、男の子８人、女の子２人の１０人の子供を育てている。沢山の子供たちに囲まれて毎日賑やかに暮らす知久さんだが、幼少期に両親の離婚を経験し、温かい家族の経験が少なかったため、自身に子供ができた時「自分には父親像が無く、家族のつくりかたがわからなかった」と話す。そんな知久さんが、母親と離婚した後、離れ離れになっていた父親を探すために旅に出る。父がすでに亡くなっていることは分かっていたが、会いに行くことで何かが動き出す気がしていた。その後も、あきこさんが１１人目を妊娠したり、長女が県下屈指の難関高校を受験したりと慌しい日々が続く。父親像の無かった知久さんは、試行錯誤しながら「パパへの道」を歩む。

後世に残しておきたい、「時代を創った」声優たちにインタビューするシリーズ。これまでに歩んできた道のりや、「声」に対する思いを聞く。◆肝付兼太さんは『ジャングル黒べえ』の黒べえ、『ドラえもん』のスネ夫、『おそ松くん』のイヤミ、『おかあさんといっしょ」のじゃじゃ丸など、数多くのアニメーションの名キャラクターを演じ続けたが、先月（２０１６年１０月）２０日に亡くなった。９月１９日、入退院を繰り返す合間に応じてくれた生前最後のロングインタビューを、予定を変更して放送する。

横浜市にかつて存在した根岸競馬場は、横浜開港から間もない１８６６年に建設され、１９４３年まで約８０年間、日本初の本格的な洋式競馬場として一時代を築いた。現在は根岸森林公園として整備され、一等馬見所のみが当時の面影を残す建物として残る。「もしも今、この横浜で競馬が行われたら」という思いを胸に、横浜出身で競馬を愛する倉持明日香が、その願いを音だけのラジオで叶えようと、様々な人と出会いながら、当時の根岸競馬場の歴史を紐解いていく。横浜根岸にゆかりのある人、根岸競馬に関わってきた人々、地元出身の競馬騎手、そして大好きな馬たちに夢を描く競馬ファン。それぞれの思いを胸に、そして事前に出走馬を選ぶリスナー投票も行い、音だけで再現される架空のレース「横濱記念」を開催する。

日本文学者のロバート　キャンベルは、入院をきっかけに長年親しんだ井上陽水の歌を１日１曲ずつ英訳し始めた。しかし、思わぬ壁に突き当たった。英語は主語や単数・複数など明確さを求める一方、陽水の歌詞は曖昧なのだ。例えば「飾りじゃないのよ涙は」の赤いスカーフは誰のスカーフなのか。キャンベルが陽水との対談で率直な質問をぶつけ、歌詞の世界を読み解いていく。対談で取り上げる曲は、「青い闇の警告」「飾りじゃないのよ涙は」「カナリア」「いっそセレナーデ」「ゼンマイじかけのカブト虫」「最後のニュース」など。四半世紀前に書かれた「最後のニュース」の歌詞世界は今もなおリアリティを持つ。井上陽水の歌詞を通じ、“言葉の曖昧さ”が持つあたたかさや、言葉が持つ本来の力についてもう一度考える、知的エンターテインメント。歌詞の朗読は三上博史。

後世に残しておきたい、「時代を創った」声優たちにインタビューするシリーズ。これまでに歩んできた道のりや、「声」に対する思いを聞く。◆１回目のゲストは、４０年以上『鉄腕アトム』の声を担当し、「声優の母」とも呼ばれる清水マリさん。「声だけで感情など心を表現する声優は、俳優の中でも一番難しいジャンル」だと語る清水さんは、７９歳になった現在も養成所の講師や朗読教室などで後進を育成している。声優業界の移り変わり、若い後継者たちに伝えたいことなどを語る。（インタビュー部分のみを公開）