日本の三大秘境と呼ばれている富山県五箇山、宮崎県椎葉、徳島県祖谷。日本の原風景が残るこれらの地区には、農民音楽をルーツとする民謡が、正調のものはもちろん、変化した形式でも唄い継がれている。またこれらの民謡には平家の落人伝説が深く影響していることも忘れてはならない事実である。民謡をはじめとする伝統芸能の衰退をどう考え、どうしていくべきだろうか。各地に伝わる伝説を紹介し、現地の人々が唄う珍しい音源や、成世昌平さんのアカペラや演奏で民謡を楽しみながら考えていく。取り上げられるのは、椎葉村の「ひえつき節」、祖谷に伝わる「東祖谷の粉ひき唄」「西祖谷の粉ひき唄」、五箇山の「麦屋節」「こきりこ節」。

山梨県甲府市中央、銀座通り商店街の春光堂書店は、創業１００年の老舗書店である。ユニークな試みで全国から注目される４代目、宮川大輔さんの活動を追う。◆宮川さんは静岡県の広告代理店を辞め、３０歳で実家の書店を継いだ。しかし、震災や巨大ショッピングモールの開業、暴力団抗争、さらには近所に大型書店が出店するなど、様々な困難が襲いかかる。そんな逆境に立ち向かうべく、彼が手がけたのは、店内ディスプレイの大胆な変更と棚の編集。そしてブックディレクターとしての知識、技術を活かした県内のホテルやワイナリーなど店の外へ本を持ち出す新たな試みだった。さらに、月に一度の読書会や、県内在住者がお勧めの本を紹介する「やまなし知会（ちえ）の輪会」など、本を通して人と人をつなぐ活動により、県内外から注目を集めている。小さな街の本屋さんが、これからも存続し、必要とされるためには何が必要か、宮川さんの熱い思いを伝える。

平日朝の生ワイド番組。パーソナリティは近藤丈靖と表佳世。（２００７年４月放送開始）◆今回は大人の自由研究、そしてちょっとした日常の楽しみ方を提案しようと、「ものもらい」の呼び方を調査する。スタジオには新潟県地図を用意し、ものもらいの呼び方の分布を戦国時代になぞらえ、勢力分布を記録した。番組には県内に留まらず、様々な地域の呼び方が集まってきた。レポートコーナーではそのフットワークを活かし、観光客が多く集まる新潟県長岡市の寺泊で調査。さらに番組に出演してくださる方にもご協力頂き、データを収集した。ものもらいの呼び方を企業として大々的に調査しているロート製薬の協力も得て、番組のデータと照合し、より信憑性を高めた。仙台ではものもらいを「バカ」と呼ぶというメッセージには、実際に仙台出身のパーソナリティに協力を仰ぎ、真偽を確認。番組の中では最終的に調査結果を発表。言葉を通じて想い出に出会えたというメッセージも寄せられた。（５４分の編集版を公開）

愛知県に住む榎本知久さん一家は、男の子８人、女の子２人の１０人の子供がいる１２人家族。知久さんは何事にも一生懸命な全力パパで、朝から洗濯、食事、子供の見送りまで忙しく動き回る。沢山の子宝に恵まれた知久さんだが、幼少期は両親の離婚で親の愛情に恵まれず、子供がでるまで「自分の中に父親像が無く、家族のつくりかたがわからなかった」と話す。生き別れた父親を探す知久さん、長男の中学進学、長女の高校受験、妻の１１人目の妊娠など、波乱万丈な榎本さん一家の人生の転換期を追う。何事にも全力で取り組む知久さんが、妻と共に困難を乗り越え、子育てに奮闘する姿を通して、家族の絆を描く。

めでたい新年を琉球古典音楽と沖縄音楽で祝う。かりゆし新年会と題して、２部構成で制作。元日に放送した第１弾は、家族の新年の様子を描いた。その第２弾「行逢りばうちなーんちゅ」は、出逢ったらやはり、うちなーんちゅだったという意味。世界各国に根を下ろした沖縄出身者の子孫にも、沖縄音楽は受け継がれている。また、様々なきっかけで沖縄の音楽に出会い、沖縄に移り住んだ外国人もいる。県内外・海外公演も精力的に活躍している琉球芸能実演家の新垣恵と大城貴幸を中心に、海外から沖縄音楽に惹かれ沖縄で活躍している唄者や、県子弟研修で沖縄の古典音楽や楽器づくりを学んでいる留学生らが集まる新年会。アメリ力、ブラジル、フランスから三線で繋がった若き唄者が集い、沖縄の音楽と出会ったきっかけや、各国の正月事情などを語り合い、歌で正月を華やかに祝う。

広島では、２０１６年のオバマ米大統領訪問を機に外国人観光客が急増している。被爆から７２年の夏、原爆ドーム前では多くの外国人が対話を重ねていた。６万人におよぶ外国人に被爆の実態を伝え続けたきた三登浩成さん（７１歳）。三登さんは母親の胎内で被爆したため被爆そのものの記憶はないが、母から被爆体験を聞き取り、その思いを受け継いで被爆の実態を伝える活動を１１年間ほぼ毎日続けている。三登さんと母のやりとり、三登さんに共感して母国でヒロシマを伝え始めた米国人を取材し、ドーム前から世界に発信されるメッセージを見つめる。

２０１６年１２月３０日、ノートルダム清心女子大学理事長の渡辺和子さんが、すい臓がんのため８９歳で亡くなった。ベストセラー『置かれた場所で咲きなさい』の著者としても知られる渡辺さんは、９歳の時に２．２６事件に巻き込まれ、目の前で父親が殺害されるという壮絶な経験をした。その後、修道生活に入り、人格教育に全霊を注ぎ、亡くなる直前まで大学の教壇に立ち続けた。山陽放送の局内を探したところ、２９年前に渡辺さんがラジオ番組に出演した際のインタビューが見つかった。大学生向けの番組で２．２６事件から「赦し」と「和解」に至るまでの葛藤についても静かに語っていた。渡辺さんの生涯を振り返るとともに、今の時代にこそ響く渡辺さんのメッセージに、再び耳を傾ける。

山形県庄内地方を中心に活躍する表現集団「いではプロジェクト」が２０１７年３月、山形市で語り劇「大地の母～遥かなる満州の記憶～」を上演した。山形市から満州に移り住んだ一家の物語である。モデルとなった神保さん一家は太平洋戦争末期、夫婦２人と子供４人で旧満州で暮らしていた。そこに突然、ソ連軍が侵攻。列車で逃げようとしたが、一部が爆発して火の海に。何とか逃れ、牡丹江を目指したものの、ソ連軍の機銃掃射で恐怖にさらされる。牡丹江に到着しても収容され、子供たちは栄養失調などで次々と亡くなり、長男だけになってしまった。そして１年後、ようやく日本に帰国する。母・まさのさん（享年８７歳）が戦後２０年たって綴った手記「追憶」をベースに、長男・亮さん（享年７７歳）の手記「戦争の恍惚」の内容を加えて脚本が制作された。語り劇と手記を通して亮さんの人生を振り返りながら、戦争を知らない若者たちが、どう戦争を伝えていくかに焦点を当てる。