太平洋戦争の際、飼っている犬や猫を国家に献納するよう求める、いわゆる「犬猫の供出」が全国各地で行われた。「兵士の防寒具に充てる」として処分された犬猫は、全国で少なくとも９万３０００頭余り。戦時下の日本で、どのような事情で犬猫の供出が行われたのか。戦時資料を研究している西田秀子さんの協力を得て膨大な資料に当たり、沈黙していた関係者の証言を集め、知られざる「戦時下の犬猫供出」の実態に光を当てた。◆２０１７年ＡＢＵ賞受賞

古事記編纂１３００年の年に、古事記を題材に制作したラジオドラマ。◆時は天武天皇の治世。国の始まりを伝える上古の物語を正しくまとめて後の世に伝えるべく、これらを誦習するよう、優秀な一人の若者に詔が下された。宮中に仕える舎人、稗田阿礼（ひえだのあれ）である。抜群の記憶力の持ち主と評判で、「目と耳に触れたものは心に留めて忘れることはない」と人々から噂されるほどだった。ところが実際の阿礼はいたって普通の若者。前人未到の大仕事を命じられ、夜な夜な人知れず誦習の稽古に励むのだった。ある晩、不意に睡魔に襲われた阿礼は、不思議な夢を見る。

武田鉄矢さんが、宮沢賢治の「風の又三郎」を数度読むうちに発見したという、現代の少年達が抱える陰の部分、少年から思春期への歩みを、ミステリアスに読み解いていく。◆「風の又三郎」を朗読でなぞりながら進行する。武田さんはまず、「どっどどどどうど…」と、未熟なモノを吹き飛ばそうと歌う物語の始まりに、作品の底流に流れる何かがあるのではないかと問いかける。新学期の初日、「風がどうと吹いて来て教室のガラス戸はみんながたがた鳴り、学校のうしろの山の萱や栗の木はみんな変に青じろくなってゆれ風が吹きます。」とあるように、「風の又三郎」と綽名された高田三郎が何かするたびに、風が吹き始める。この「風」を武田さんは、ある暗喩と見立てる。異質な転校生、三郎への子供達の対応には、イジメに似た構図を見る。風は物語の中で繰り返し現れる。

水俣病の公式確認から６０年。水俣病は、地域の人々にどんな被害をもたらしてきたのだろうか。また、２０世紀最大の環境汚染事件ともいえる未曽有の公害事件は、私たちに何を問いかけているのだろうか。患者や関係者の肉声を手がかりに専門家とともに事件史をたどり、その現代的な意味を考える。出演は、富樫貞夫さん（熊本大学名誉教授）、岡本達明さん（元チッソ第一組合委員長）、高峰武さん（熊本日日新聞社　論説主幹）。　

紀州鉄道は和歌山県の真ん中、御坊市の町の中心からＪＲ紀勢本線御坊駅までの２．７キロを８分で結ぶ小さな鉄道。旧称が御坊臨海鉄道で、地元の人は今も「りんこう」の愛称で呼び親しんでいる。地元の工場から製品や特産品の木材の貨物輸送も担っていたが、現在は旅客だけで、１両のレールバスが田園地帯や住宅が立ち並ぶのどかな町なかをゆっくり走っている。起点を含めて５つしかない小さな駅。利用客の多くは車を利用しない生徒や高齢者だ。駅前の小さな喫茶店、生活感漂う食品店、懸命に鉄道を支える職員。人々の顔と表情が至近距離で見えてくる。過疎と高齢化、車社会が進み、鉄道の経営は容易ではないが、小さな鉄道は廃線の危機を幾度も乗り越え、どっこい生きている。りんこうの利用者や地域に生きる人々の生活を通して、過疎が進む地方の鉄道の役割を考える。

ベストセラー『憲法主義』の二人の著者、九州大学法学部教授の南野森さんと、ＡＫＢ４８を卒業した大学生の内山奈月さんと共に旅する、ロードムービー型「憲法」エンターテインメント番組の続編。今回は沖縄と福岡を旅し、平和の大切さと、平等について考える。沖縄では、ひめゆりの塔、普天間飛行場、米軍ヘリ墜落事件が発生した沖縄国際大学などを訪ねる。実際の場所に立ち、憲法で定められている様々なこと、沖縄が抱える不平等とも思える問題について、憲法学者の南野教授が分かりやすく紹介する。沖縄県以外では、憲法第１４条の「法の下の平等」という言葉をあまり考えることなく生活をしていることも見えてくる。福岡ではこの夏に実施される１８歳選挙権を考えるとともに、東洋一と謳われた大刀洗飛行場の跡地にある大刀洗平和祈念館へ。内山さんの素直な気持ち、疑問、平和への思いがストレートに伝わってくる。

お人好しのアヤコ（イモトアヤコ）は、友人の栄子（西澤梨花）から頼まれた傘を届ける途中、雨で足を滑らせ階段から転落してしまった。目を覚ますとアヤコはお花畑におり、死神の使い（和田正人）から「今までの人生でこんないいことをしたって説明できないと、あの世に連れて行きます。制限時間は４５分です。」と告げられる。果たして自分には生きる値打ちがあったのだろうか。アヤコは３０年の我が身のエピソードを振り返り、必死で生き残るための希望を探す。周囲の顔色をうかがい自分のことを後回しにしてきたアヤコに、死神の使いは生きる希望を問う。自分を捨てずに生きてほしいと願う、死神の思いの根底にあるものとは何なのか。そして人生を振り返ったアヤコは再び生き返ることができるのか。

「障がい者」イコール「車椅子」のイメージが強いが、聴覚障害、知的障害のある人など、外見では判断できない人々も多くいる。２０１５年１０月、「音のつぶコンサート」が大阪のビッグ・アイ（国際障害者交流センター）で開催された。これは知的障がい者の方が、劇場で１人の鑑賞者として楽しむにはどうすれば良いか、学び体験するコンサートだ。劇場では突然大きな音（ブザー）が鳴ったり暗くなったりする。それが障がい者を驚かせ、不安にする。このコンサートでは冒頭に司会者が、なぜそうなるのかを丁寧に説明する。４月に施行された「障害者差別解消法」は、障害を理由とする差別をなくし、誰もが暮らしやすい社会を目指す法律だ。このイベントで鑑賞のルールを学び、周囲に迷惑を掛けずに一般のコンサートにも参加できるようになれば、障がい者の行動範囲が広がる。受け入れる施設側も、配慮が求められる。イベントの企画者、保護者などのインタビューを通し、「障がい者と共に生きる社会」を考えていく。◆ラジオ大阪報道特別番組