毎年恒例の「新語・流行語大賞」で、２０１６年は年間大賞の「神ってる」をはじめ、「聖地巡礼」「トランプ現象」「ポケモンＧＯ」「ＰＰＡＰ」などのことばがトップ１０に選ばれた。また、リオデジャネイロ五輪でのメダルラッシュ、映画「シン・ゴジラ」「君の名は。」の大ヒットなども大きな話題を集めた。出版編集者で、ラジオ深夜便の「くらしの中のことば」出演者の一柳みどりさんが、１年を振り返り、話題になった新しいことばや流行語を解説する。

京都市北区に暮らす本出ますみさんは、クラッサーをしている。クラッサーとは、刈り取られた羊の原毛を品種ごとに分類する仕事だ。羊は日本では動物園などでしか見られないが、世界的には太古から衣・食・住をまかなえる家畜として、人と寄り添って生きてきた動物である。毛は衣類や敷物に、肉やミルクは食用、油脂は石鹸に、腸は楽器の弦になる。モンゴルのゲルも羊の毛で覆われている。そんな羊に魅せられた本出さんをクローズアップしながら、彼女を取り巻く羊にまつわる人たちを追いかける。この先、自給自足の時代が来るかもしれない。その時、羊のような動物との共存共栄が必要なのかもしれない。自然との共存、衣服のあり方など、様々な角度から、人と羊の関わりと、そこに生まれる世界を描く。

「障がい者」イコール「車椅子」のイメージが強いが、聴覚障害、知的障害のある人など、外見では判断できない人々も多くいる。２０１５年１０月、「音のつぶコンサート」が大阪のビッグ・アイ（国際障害者交流センター）で開催された。これは知的障がい者の方が、劇場で１人の鑑賞者として楽しむにはどうすれば良いか、学び体験するコンサートだ。劇場では突然大きな音（ブザー）が鳴ったり暗くなったりする。それが障がい者を驚かせ、不安にする。このコンサートでは冒頭に司会者が、なぜそうなるのかを丁寧に説明する。４月に施行された「障害者差別解消法」は、障害を理由とする差別をなくし、誰もが暮らしやすい社会を目指す法律だ。このイベントで鑑賞のルールを学び、周囲に迷惑を掛けずに一般のコンサートにも参加できるようになれば、障がい者の行動範囲が広がる。受け入れる施設側も、配慮が求められる。イベントの企画者、保護者などのインタビューを通し、「障がい者と共に生きる社会」を考えていく。◆ラジオ大阪報道特別番組

ゼロ戦パイロットとして太平洋戦争を戦った長野市の原田要さんが、今年（２０１６年）５月に亡くなった。９９歳だった。戦後、原田さんはゼロ戦パイロットの生き残りの一人として、自らの戦争体験を語ってきた。撃墜した敵機のパイロットの顔が忘れられないと語り、幾多の戦闘で多くの人の命を奪った罪悪感に悩み続けてきた。原田さんは講演を積み重ね、戦後７０年を迎えた２０１５年の夏、最後の講演の壇上に立つ。一方、原田さんは戦後、幼稚園を設立し、園長として幼児教育に打ち込んできた。子どもたちには絶対に戦争を体験させたくない。戦争のない平和な世界を守って欲しい。それが戦争で多くの人の命を奪った罪を償うことでもあった。原田さんが亡くなった今、その思いは原田さんの家族や子どもたちによって受け継がれようとしている。

平日夕方の生ワイド番組。この日は２０１６年４月１６日の熊本地震本震の後、多くの人が避難する状況で、最初のレギュラー番組放送回である。通常とは番組内容を変えて地震関連情報中心の構成にしたが、非日常の事態で少しでも平常心を取り戻してもらえるよう、いつもの時間に、いつもの番組、いつもの声を届けるべく、しかし避難所や車中で初めて聴くリスナーがいることも意識して「ゆっくり丁寧に」を心掛けた。出演は、メインパーソナリティのかなぶんやに加えて、いつもはロアッソ熊本情報を伝えている風戸直子。余震が続く中、ライフライン、交通、店舗の営業状況など、逐一地震関連情報を伝えた。また楽曲もその状況に合うものか留意した。デマなどで情報が錯綜する中、正確な情報を伝えるというラジオの使命を全うするため、多くのスタッフが関わった。あるリスナーからは、「緊張の糸が張り詰めていたが、ラジオから流れてくるいつもの声に自然と涙がでた。心が落ち着いた。」というメッセージも寄せられた。

「楽しくなる×タメになる→元気になる」の３つの「なる」がコンセプトの生ワイド番組。（２０１７年３月放送開始）◆毎年５月に開催される箱館五稜郭祭は、戊辰戦争の舞台となった五稜郭にまつわる歴史を後世に伝えることが目的で、この地で最期を迎えた新撰組副長、土方歳三を演じるコンテスト、当時の旧幕府軍と官軍に扮する維新行列・音楽パレード、五稜郭明渡を再現する開城セレモニーなどが行われている。箱館戦争には数多くの関連書籍が存在する。今回取り上げる「麦叢録（ばくそうろく）」は、旧幕府軍の榎本武揚の側近、小杉雅之進が書いた戦記で、敗者の側から描かれた数少ない例である。北海道在住のノンフィクション作家、合田一道氏に、箱館戦争がどんな戦争だったか、榎本らは何のために戦ったのかを解説してもらう。リスナーからも「函館市の思い出」を募る。（６０分の編集版を公開）

落語家の桂歌丸さんは今年８０歳。そして噺家生活６５年、司会として出演している人気テレビ番組「笑点」が５０周年という節目の年である。入門当時の思い出、師匠の教え、「笑点」の仲間たち、今もなお取り組み続けている古典落語への思いを聞く。◆歌丸さんは昭和１１年（１９３６）横浜生まれ。ラジオの寄席番組が大好きで、１５歳で中学生ながら古今亭今輔師匠に入門した。芸に厳しい師匠に「芝居を見ろ」と言われ、歌舞伎から間や様々な仕草を学んだという。「笑点」には、番組開始当時から回答者として出演。体調不良で引退を決意した先代三遊亭円楽さんから司会を引き継いだ。名前と顔を広めてくれた番組のために、あと５０年は司会をやりたいと語る。

絵本作家・かこさとしさんの２回シリーズのインタビュー。「だるまちゃんとてんぐちゃん」など、長く読み継がれている絵本を６００冊以上も発表してきたかこさん。２０１６年３月に卒寿を迎え、いくつかの持病を抱えているが、なお新作の執筆に取り組んでいる。４７歳まで化学工業会社の研究者だったかこさんが絵本作家に転じたのには、日本の敗戦が強く影響しているという。節目となった数冊の絵本を軸に、いま改めて子どもたちに伝えたいメッセージとは。◆２回目は、出版社より敗戦後の復興を表すにふさわしい絵本の制作を依頼され、３３歳で絵本作家として歩み出すきっかけとなった「ダムのおじさんたち」、会社員を辞めて絵本作家一筋として歩むこととなった記念碑的作品「うつくしい絵」を取り上げ、制作時のエピソードについて聞く。